先日、仕事で初めて訪れたロンドンで驚いたのは、路上喫煙者とポイ捨てがとにかく多いということ。到着した空港の建物を1歩出た瞬間から、右も左も路上喫煙者だらけなのにはさすがに面食らった。イギリスでは2007年から法律による厳しい喫煙規制が敷かれており、屋内は全面禁煙になっているというが、その分(?)、外ではみんなタバコをバカスカ吸っている。
カフェなどの飲食店もテラス席は基本的にどこも喫煙可能で、道行く人のすぐ横で食事を楽しみながら紫煙を燻らせている人を至るところで見掛ける、という印象だ。一方、その「道行く人」も少なくない数がタバコを吸いながら歩いているのだから、日本人からするとなかなか強烈な光景である。
タバコ売り場がどこにもない!?
よっしゃ試しに買うてけつかろ、と思って街でタバコ売り場を探してみると、これが全然見当たらない。ネットの情報などによると、どうやらイギリスではタバコの陳列販売が禁じられているらしい。ではみんなどこで買っているのかというと、スーパーや食料雑貨店などの有人レジカウンターだ。店員に「タバコを売ってくれ」と声を掛けると、レジの後ろにある戸棚の扉を開けて、そこから取り出して売ってくれるという。知らなければ決して辿り着けない魔窟。
となると、買う方はどんなタバコがいくらで売られているか全くわからず、銘柄を見て選ぶこともできないのでは? と疑問に思うかもしれない。その通りである。なので筆者は、目についた適当なスーパーに入り、とりあえず間違いなく置いてありそうな「マールボロ」を頼んでみた。すると店員も黙って頷き、棚の扉をおもむろに開けて中のタバコを手渡してくれた。…のだが、パッケージが異様に黒い上、何やら喫煙で損傷を受けた肺だか脳だかのおどろおどろしい写真が大きくプリントされている。俺の知っているマールボロと違う。そう、イギリスではパッケージにも厳しい規制が設けられており、ブランドごとに異なるデザインにすることはできないのだ(これも後で調べて知った)。
マールボロ1箱2250円
そして衝撃だったのはその価格。マールボロは1箱13£ほどで、カードの明細を確認したら日本円にして2250円(2022年7月現在)が引き落とされていた! それなりに高いだろう、まあ1000円くらいかな、などと予想してはいたのだが、まさか2000円を超えてくるとは。それであの極めて自由かつ盛んな路上喫煙ぶり、私はイギリスがわからない。
※ちなみにずいぶん高くなったとはいえ、マールボロは日本では1箱600円のようです(2022年7月現在)。あと、イギリスでも別に路上喫煙が積極的に“推奨”されているわけではないと思います。念のため。
いや待て、やたら高いのは世界に冠たるマールボロだからではないか? と気を取り直し、別の店を訪れた際に今度は「ロンドンで最もポピュラーなタバコをくれ」と注文してみた。「なるほど、お前はわかっている男だ」と言いたげに店員が片方の眉をクイッと上げつつ棚から取り出したのは、「Embassy Signature Gold」なるタバコ。パッケージはやはり先ほどのマールボロと同じデザインで、値段は10£ちょい、1750円ほどだった。まあマールボロよりは安いけれども…。
イギリスでは肥満も社会問題に
在英の日本人にこうした喫煙事情について話を聞くと、「イギリスは今、喫煙による健康被害よりもむしろ肥満の方が社会問題として関心を持たれているかもしれない」とのこと。イギリスは子供の肥満率が世界的に見ても高く、11歳から15歳のおよそ3人に1人が肥満または肥満傾向にあるという。確かに、街を歩いていてそんな雰囲気を感じなくもなかった。
政府は2016年に子供の肥満に対する行動計画を公表するなど、健康増進のための様々な対策を打ち出しているのだとか。どこの国も、いろいろ大変だ!