インボイス制度がややこしすぎる!「まずは問題点の整理を」声優たちがアニメで解説 「大きな問題」「正しく理解したい」山寺宏一もコメント

黒川 裕生 黒川 裕生

2023年10月の施行が予定されている適格請求書等保存方式(インボイス制度)に対し、抗議の声を上げ続けている声優の有志グループ「VOICTION(ボイクション)」が、制度の問題点を整理し、正しい理解につなげることを目的にオリジナルアニメを制作。TwitterとYouTubeで公開を始めた。アニメは1話2分程度で、全7話の構成。今後、数日おきに順次公開していくという。

インボイス制度は、企業などが取引する際、消費税の税率や税額を記載した請求書(インボイス)を使うルールのこと。課税売上高が1000万円以下の免税事業者はインボイスを発行できず、登録を受けるには消費税の申告・納税が課せられる課税事業者になる必要がある。このため「弱い立場で働いている人の負担があまりにも大きい」として、憂慮する意見が続出。特にここ1年ほどは、VOICTIONをはじめ、フリーランスが多い各種団体が反対声明を出すなど、問題意識を共有する連帯の輪が加速度的に広がっている。

アニメは企画、制作、演出、出演の全てをVOICTIONメンバーが担当。普段、アニメに声を吹き込んでいる声優のプロ集団とはいえ、いわゆる「声の芝居」以外は誰もが専門外。台本や絵コンテを作る作業は試行錯誤の連続だったそうだ。

内容は、架空の学校「私立ボイクション学園」を舞台に、ラジオ研究部の部員であるネズミやサル、ヘビなどの擬人化された動物たちがインボイス制度について学んでいくというもの。「インボイス制度はじまる?!」と題された第1話は、ネズミが「大変だ!インボイス制度が10月には始まっちゃうらしいよ」と部室に駆け込んでくるところから幕が上がる。

「インボイス制度って何?」とピンと来ていない部員たちに、「簡単に言えば消費税の増税だよ。しかも小規模の事業者が廃業してしまうかもしれないんだ」と危機感を口にするネズミ。「軽減税率で8%と10%に分かれている消費税を正確に計算するため」だという導入の背景を解説しているところへ、今度は何やら訳知り顔のウサギが登場。「小規模事業者は預かった消費税を国に払っておらず、それは不公平な“益税”と呼ばれている」などとして、「インボイス制度は必要不可欠」と主張するのだった…。

26日に公開された第2話「“益税”はズルい??」では、「消費税は預かり金だからちゃんと国に納めるべき。納税は国民の義務だ」と断じるウサギに、ネズミが「売上高1000万円以下の小規模事業者は、そもそも免税点制度によって消費税の納税義務が免除されており、預かり金でも益税でもない」と真っ向から反論。「どちらの言い分もわかるような、わからないような…。とにかくややこしい制度だということだけはおわかりいただけたのではないだろうか」というナレーションで締められている。

アニメに参加した声優の甲斐田裕子さんや咲野俊介さん、西森千豊さん、上田燿司さんらはそれぞれ自身のTwitterなどで「賛成も反対も、まずは制度内容を知って皆で考えませんか?」「思い込みをとっぱらって、一緒に考えましょう」と呼び掛け。VOICTIONの担当者は「アニメによって制度のメリット、デメリット、よくある誤解などをあらためて整理し、制度そのものと問題点についての認知が広まることを期待しています」と話す。

今回の取り組みに対し、日本を代表する声優の山寺宏一さんは「声優業界のこと以前に、あらゆる職種の小規模事業者と、そこに関わる全ての人に影響を及ぼすとても大きな問題だと思います。よって、全ての国民に関係するのではないでしょうか」とコメント。山寺さん自身、「賛成反対を論じる前に、制度の仕組みと問題点を正しく理解しなければと感じて」いたといい、「そもそも消費税は預かり金ではなく『益税』というものは無い、という事実に驚きました。スタートまで時間がありませんが、この動画を始め、専門家の方の意見を聞いてキチンと学んで行きたいと思います」との姿勢を示した。

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