インボイス制度に反対署名18万筆集まる 「なんでここまでひどい目に」「人材の海外流出進む」…会見で飛び出したフリーランスの悲痛な声

黒川 裕生 黒川 裕生

適格請求書等保存方式(インボイス制度)の実施に抗議する有志団体「インボイス制度を考えるフリーランスの会(通称「STOP!インボイス」)」が、2021年12月からオンライン署名活動を続けている。13日には、これまでに集まった18万162筆を財務省に提出。同日開いた記者会見では、弁護士やフリーのクリエイターら6人が続々と壇上に。それぞれの業界の現状を赤裸々に語った上で、インボイス制度について「これ以上の事務作業は不可能」「弱い者いじめだ」などと訴え、あらためて反対の姿勢を表明した。

「STOP!インボイス」は署名活動と並行して、問題意識を共有する有志団体などと連携しながら、100人以上の政治家に陳情を重ねてきた。この日、都内で記者会見に臨んだ発起人の小泉なつみさん(ライター)は「陳情を通じてわかったことは、政府側も制度の歪さや反対の声が大きいことは認識しており、与党議員の中にさえ両手を挙げて賛同している人は1人もいないということ。根本的な問題が何も解決しない『緩和措置』などではなく、制度の『中止』を断固として求めたい」と力を込めた。

登壇したヨガインストラクターの塙律子さんは、複数のスタジオを移動しながら教えるという業務形態であることを紹介。そして契約先からは既に、インボイス制度に登録するかどうかを決めるよう迫られており、登録しない場合は「報酬から減額する」と通達されているのだという。

塙さんは「去年の収入だって100万円もないのに、インボイス制度が始まると事務負担で仕事も収入もさらに減ってしまうので、本当に死活問題です。2020年の緊急事態宣言時には、スタジオのひとつからクラスをゼロにされ、収入がなくなって眠れなくなりました」と振り返った。「今、インボイス制度を導入するのは、藁にすがりながらようやく浮上してきたところを暴力的に沈めるような行為だと思います。フリーランスという弱い立場で、一方的な契約解除や不利益変更に苦しんでいる私たちのような働き方があることをもっと知ってもらいたい。これ以上、生活を逼迫させないでほしいと切に願います」と憤りを滲ませた。

この日は他にも弁護士の宇都宮健児さんや経営士の堺剛さん、草木堂野菜店の甲田崇恭さん、ライブハウスロフトプロジェクト社長の加藤梅造さん、映像ディレクターのブンサダカさんが順にマイクを握り、インボイス制度が始まると自身の業界にどのような影響が生じるかについて、具体的な数字を示しながら説明。ライブハウスを運営する加藤さんは「コロナ禍の休業要請のときにも感じたが、この国は本当に文化芸術を軽く見ている。インボイス制度も同様。不利益を被る人がいることに、怒りが湧いてくる」と話し、ブンサダカさんは「これまでもひどい目に遭わされてきたが、いよいよ海外への人材流出に拍車がかかるのではないか。官僚も政府も日本の文化を守ろうという気がないらしいから、こっちから捨ててやるというくらいの気持ちになる」と言い切った。

会見はYouTubeでも配信され、チャット欄には「『決まったことだから仕方がない』じゃないよね」「制度の話、何回聞いてもどんどん謎が生まれてくる」「労働者の邪魔をする制度」といった書き込みが相次いでいた。

STOP!インボイスでは今後も地方議会への働き掛けやイベント、超党派議連ヒアリングなどの活動を予定。引き続き、SNSなどで情報発信にも力を入れていくという。

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▽STOP!インボイス
https://stopinvoice.org/

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