中国人による沖縄の無人島購入 次に警戒すべきは「小笠原諸島」だ 早急に強化すべき「重要土地等調査法」

治安 太郎 治安 太郎

台湾情勢で緊張を高める中国、ウクライナに侵攻したロシア、ミサイル開発・発射を続ける北朝鮮など、現状打破を目論む独裁国家による威嚇が続いている。今日、日本も防衛費2%に向け総合的な防衛力強化に努め、それは概ね国民からも支持されている。しかし、最近もっと身近なところで警戒すべき出来事があった。

2月半ば、山東省・青島出身で金融業や不動産業を営む30代の女性が沖縄本島北部から20キロほど離れた無人島・屋那覇島を購入したとの情報をSNS上にアップした。女性は親族の会社名義で土地を購入したと説明しているが、買った土地の面積は島全体の51%を占めるという。

外国人が日本国内の土地を購入することについて、法規制はどうなっているのか。それについては、1925年に施行された外国人土地法に遡る。外国人土地法は定める政令で外国人の土地購入を制限できると明記しているが、その政令は終戦直後に廃止され、最近まで法律は存在するものの外国人が規制なしに自由に土地を購入できる状況だった。しかし、近年中国企業、中国人による土地購入が大幅に増加していることを受け、2021年6月、外国人の土地購入規制に関する重要土地等調査法が施行された。

重要土地等調査法は、安全保障の関連から重要な施設の周辺1キロを「注視区域」に、自衛隊基地や国境離島など特に重要とされる区域を「特別注視区域」に設定し、必要に応じて国が不動産所有者の国籍や用途を調査できるとした。また、土地や建物の所有者が機能阻害行為に関する禁止等の措置命令に従わないときは2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金を科せるとした。

だが、今回中国人女性が購入した屋那覇島は、重要土地等調査法が定める特別注視区域や注視区域に該当するものではなく、国が必要に応じて不動産所有者の国籍や用途を調査できないのだ。重要土地等調査法は、安全保障に関する懸念に対して身近なところから取り組もうという想いで施行されたはずであるが、今回の件で多くの抜け道が存在し、国民の懸念を払拭できないものであることが露呈された。

当然ながら、重要土地等調査法が対象とするのは中国だけではなく、韓国だろうがロシアだろうが米国だろうが、そこに国籍は関係ない。実質同法が最も想定しているのは中国だが、日本は軍民融合を掲げる習政権の動きを多角的に捉えるべきだろう。中国の民間企業が日本のある離島を購入したとしても、それが情報収集活動や偵察活動など軍事利用されることは十分に想定される。また、その民間企業がその後国営化されたり、民間企業社員だが中身は共産党員だというケースも考えられよう。

今後の動向で最も注意しなければならないのは、中国企業による沖縄離島の購入である。軍民融合を進める習政権としては、台湾防衛で関与するのは沖縄本島の米軍であることから、同軍の通常時の訓練や戦略、能力などをより身近なところで観察することは大きな意義がある。また、同じように米軍との統合抑止を進める自衛隊の動きを捉える上でも有効な選択肢となる。

さらには、小笠原諸島の父島、母島などの土地、島購入にも注意を払う必要がある。中国が長期的に目指すのは第一列島線を超え、西太平洋で影響力を拡大し、米軍の影響力を排除することである。そうなれば、小笠原諸島は中国にとって地政学的な、軍事戦略的な要衝となる。以前、大量の中国漁船がサンゴ目当てに小笠原諸島に押し寄せたことがあったが、今後も武装漁民を含め小笠原諸島の防衛、安全保障を考える必要がある。今日の重要土地等調査法では懸念は払拭できない。早期に外国人による島購入規制など同法の改正が望まれよう。

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