両目の眼球を摘出した、目の見えない猫…ハンディを感じさせない陽キャで、新しい家族を待っています

岡部 充代 岡部 充代

 ふわふわの長毛と大きな耳が特徴の猫のシェリちゃんは、両目とも眼球摘出手術を受けています。つまり全盲。それでも他の猫と同じようにキャットウォークを歩き、おもちゃで遊び、体重60キロのセントバーナード・ヨーゼフくんとも仲良し。シェリちゃんは兵庫県西宮市で活動する動物福祉団体『ペッツ・フォー・ライフ・ジャパン(PFLJ)』にいる家族募集中の保護猫です。

 

懸命に鳴いていた目に傷のある子猫

 生まれたのはおそらく2021年5月頃。7月に家の裏手から聞こえる子猫の鳴き声に気づいたご家族が保護しました。その際、左目はつぶれていて、右目もケガをしていたそうです。「カラスか何かに襲われたのでしょう」。そう話すのはPFLJの石本理佐子さん。野良の子猫がカラスに狙われるのは珍しいことではありません。

 シェリちゃんを保護したご家族から相談を受けたPFLJは、引き取りを決定。持ち込まれた動物たちを無条件に引き取るわけではありませんが、病院へ連れて行くなど保護した人の責任を果たしてもらった上でPFLJがバトンを受け取り、新しい家族を探すこともあるのです。

 

 シェリちゃんは施設に来てほどなく左目の眼球摘出手術を受けました。右目は光を感じているようだったので、ぼんやりでもいいから見えるようにならないか、と治療を重ねましたが改善は見られず。獣医師と相談して右目も眼球を摘出しました。

「うちで手術しなくても、飼い主さんが見つかれば結局そこで手術することになるだろうと思い、踏み切りました」(石本さん)

 設立から20年以上になるPFLJも全盲の猫は初めて。スタッフには不安もありましたが杞憂に終わったようです。

「子猫の順応性の高さには驚きました。最初は他の猫に近づきすぎて怒られることもありましたし、威嚇されているのが分からず正面衝突したことも。でも他の子に鈴をつけたら距離感がつかめるようになって、問題なく過ごせるようになりました。ほぼ同じ時期に来た子とじゃれあって遊ぶことで、噛む力加減なども分かったみたいです」(石本さん)

 PFLJには保護犬もいるのですが、現在、譲渡に向けたトレーニング中のセントバーナード・ヨーゼフくんとは特に仲良しで、足音を聞いてシェリちゃんが追い掛けることもあるのだとか。「犬には慣れているので、相性次第ではありますが、犬のいるご家庭でも大丈夫かなと思います」(石本さん)

 

阪神タイガース・秋山拓巳投手に抱っこ

 去る1月11日にはプロ野球、阪神タイガースの秋山拓巳投手がPFLJの施設を訪問。動物関連団体へのオンライン寄付サイトを運営する公益社団法人『アニマル・ドネーション』に寄付目録を贈呈したほか、犬や猫たちとふれあいました。シェリちゃんは“猫代表”として秋山投手に抱っこしてもらい記念撮影。同投手の寄付活動は昨年に続き2度目、保護施設の訪問も2度目……かと思いきや、実はシーズン中にも1月に訪問した施設を一人で再訪していたのだとか。保護動物たちを見て自身を奮い立たせるためです。それほど動物が好きで保護犬や保護猫、殺処分の問題などに関心の高い秋山投手は、シェリちゃんの保護経緯についても熱心に説明を受けていました。

 

 シェリちゃんへの問い合わせはこれまでにも何件かあったようですが、条件が合わず譲渡に至りませんでした。

「性格がいいですし、目が見えない分、慎重な動きをしてくれるのですが、とはいえ猫ですから、『こんな隙間に入るの?』『こんな高いところに上がるの?』といったことはあります。家具の配置など手さぐりになると、ご家族にもシェリにもストレスなので、できれば猫を飼った経験のあるおうちがいいかなと思っています。そして、慣れるまではお留守番も短いほうがいいですね」(石本さん)

 PFLJにはシェリちゃん以外にも“ご縁”を待つネコちゃんやワンちゃんがいます。ご興味ある方はPFLJのホームページをご覧ください。シェリちゃんに明るい未来が拓けますように。

 ■ペッツ・フォー・ライフ・ジャパンHP→http://www.pflj.org/index.html

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