1億回再生YouTuberが、地政学で楽しく教える世界情勢 「北朝鮮がミサイルを打ち続ける理由は?」

松田 義人 松田 義人

 

「ウクライナ侵攻を続けるロシア」「台湾近くで軍事演習する中国」「日本の海に飛んでくる北朝鮮のミサイル」……何かときな臭いニュースが流れてくる今ですが、ニュースでは専門用語があったり、放送時間などに限りがあったりするため「イマイチよくわからない」と悩むことも多くあります。

そんな中で、小中学生に大人気の歴史系YouTuber・いつかやる社長さんが超画期的でニュースの中身がよくわかる本を刊行しました。『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』いつかやる社長・著(飛鳥新社)という本です。

 

第二次世界大戦後、禁止されていた「地政学」とは?

「超画期的でニュースの中身がよくわかる」と書きましたが、しかしここでまた難しい言葉が出ました。「地政学」というワードです。報道などでもたまに耳にする言葉ですが、本書はまずこの「地政学とは何か」から解説しています。

「『地政学』という言葉を聞いたことはあるかな? 19世紀から20世紀にかけて発展してきた学問で、『自分たちの住んでいる国の地理的にいいところと悪いところを分析して、国の守り方や軍事戦略を考える』という学問だよ。

なんだかむずかしそうに聞こえるけど、じつは世界地図が1枚あれば理解できる、とてもシンプルな学問なんだ」(本書より)

言い換えれば、地図から見えてくる各国の「強い部分」と「弱い部分」を見つめ、そこから他国との付き合い方、自国の未来について考えていくというもの。

例えば、大陸にある国と島国、暑い国と寒い国などの各地域の違いから、それぞれの主張や思惑を理解するという、ある意味で子どもにも理解しやすい学問が「地政学」です。

 

この「地政学」は19世紀に日本に伝わり、第二次世界大戦が終わるまでの間に研究されてきた学問です。しかし、日本が戦争で負けた後、日本を支配下に置いたアメリカによって「地政学は戦争に直結する学問だから危険だ」として、日本にいた地政学者たちを全員クビにし、禁止にしていました。

しかし、近年では「地政学は戦争のためだけではなく、世界各国の動きを知るために必要な学問だ」という考えに変わり、再び注目され活用されるようになりました。

この「地政学」をベースに、気になるニュースや用語を1つのトピックでまとめ、各国をかわいい動物キャラで表現しているのが本書です。

北朝鮮のミサイルは、アメリカの経済支援を期待して

本書は「地政学の基本」「日本の地政学」「アメリカの地政学」「中国の地政学」「ロシアの地政学」「どうなる?これからの世界」といった章立てで構成されており、各章ごとに、各国の事情をイラストで極めて優しい解説で構成しています。

その中でも近年たびたびニュースになっている「北朝鮮のミサイル問題」についての解説を見てみましょう。

「北朝鮮は朝鮮半島にある国で、韓国の北に位置する。年々ミサイルや軍隊を強化していて、『演習と称し、北朝鮮から日本海にミサイルが発射された』なんてニュースもよく聞いたりするよね。かなり危険なイメージがある国なんだけど、国内はとても貧乏で、貧しい地域では餓死してしまう人が出るほどの食糧難にも悩まされているんだ。にもかかわらず、ミサイルを撃ったり軍を強くする理由は、北朝鮮の『考え』があるためなんだ。

じつはこのミサイル、アメリカへのアピールなんだ。北朝鮮はミサイルを強くすることで自分たちを危険な国だと思わせて、アメリカを交渉の場に引き出したいと考えている。その交渉でアメリカから経済支援を受けることができれば、国内の食糧不足も貧困も解決できるからね。北朝鮮はアメリカと仲がいい日本に『いつでも攻撃できるんだぞ!』とアピールするためにミサイルを撃っているんだ。もちろんミサイルは驚異的だから、十分注意しなくちゃいけないんだけど、必要以上におびえることはないんだ。

アメリカが北朝鮮に経済支援をおこなう可能性は十分ある。北朝鮮はアメリカ最大のライバル中国の隣りにあるから、北朝鮮を味方にできれば、中国の動きをより近くで封じることができるんだ。北朝鮮も自分たちの地政学的によいところを利用しているんだね」(本書より)

編集に頭を抱えることもあったが、そこも「地政学」に支えられた

語りかけるような優しい筆致と、あらゆる情報を咀嚼し、極めてわかりやすい短い文章で解説している本書。前述の通り、「日本」「アメリカ」「中国」「ロシア」などの各国が抱えている事情、そして各国と対峙しがちな理由がスンナリ頭に入ってきます。

また、後半ではさらにわかりやすく「地政学」に伴う用語集もついており、まさに「今さら聞けない」さまざまな言葉、歴史的事象なども網羅しています。特に世界情勢が動き続けている今にあっては、老若男女必読の書と言って良いと思いました。最後に担当編集者の古川さんに聞きました。

「私自身が世界情勢やニュースに疎いため、わかりやすく学べる動画を探していました。YouTubeを見ているうちに行き当たったのが、歴史系YouTuber『非株式会社いつかやる』さんです。

当初は、単純に解説の楽しさに興味を引かれたのですが、見ているうちに『行きすぎた発言』『煽り』がないことに驚かされました。こういった動画配信では、炎上ねらいの偏った演出や発言も多いと思うのですが、自分の意見を伝えつつも、逆の意見(書き込み)に対しても否定することなく、1つの意見としてフラットに受け止めている姿勢に魅力を感じました。ここから『書籍でも、きちんとした情報を伝えたいな』といった思いが増し、執筆のご依頼をしました」(古川さん)

しかし、本書の制作途中で奇しくもロシアによるウクライナ侵攻が始まり、「どこからどこまでを触れるべきか」など頭を悩ませたとも。

「ウクライナ侵攻が始まり、台湾有事や北朝鮮ミサイル問題についても、連日ニュースが続いていました。こういったテーマの本では避けられないことかもしれませんが、日々状況が変わっていくなかで『どこからどこまでを書いていただくのか?』について、頭を悩ませました。

そんなとき、著者のいつかやる社長さんから『地政学のよいところは、地理的な条件が変わらないことです。日本は島国で、明日から急に大陸国家にはなりませんよね。そんな不変の地理条件をもとに、各国はどう考えるか? ということを書いていくので、大丈夫です』と言っていただき、安心してお任せすることができました」(古川さん)

最後に改めて本書の一番の魅力についても聞きました。

「ウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル、尖閣諸島問題や日米関係など、国際情勢は地政学から見れば、簡単に理解できます。また、地政学では地理はもちろん、国際情勢や外交、歴史の内容を含むので、さまざまなことを一気に理解できるオトクな学問ともいえます。

『ちょっと難しそうだな……』と思える内容を、フルカラーの90枚以上のイラストと地図でわかりやすく解説しているので、スキマ時間にちょこちょこ読むのもオススメです。この年末年始、『世界のこと』を知る第一歩として、ぜひご活用ください」(古川さん)

『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』いつかやる社長・著(飛鳥新社)http://www.asukashinsha.co.jp/bookinfo/9784864109253.php

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