そう遠くない未来…日本を襲う中国からの「経済攻撃」 脱中国のリスクヘッジは待ったなし

治安 太郎 治安 太郎

米中による戦略的競争だけでなく、ロシアによるウクライナ侵攻もあり、大国間対立は一層激化している。日本の岸田政権は米国や欧州との結束を固める一方、中国やロシアへの懸念を強く表明している。日本の安全保障環境を考慮すれば、岸田政権の外交安全保障政策は多くの国民から理解されるべきだが、1つの懸念事項が浮上している。中国による日本への経済攻撃だ。

経済攻撃のことは近年、「エコノミックステイトクラフト」と呼ばれ、政治的目的を達成するため、軍事的手段ではなく経済的手段によって他国を攻撃することを指す。そして、近年、中国はその経済攻撃を活発化させている。

1つに台湾への経済攻撃だ。今年に入っても6月、中国は台湾産の高級魚ハタの輸入を一斉に停止した。台湾から輸入されるハタから複数の禁止薬物が検出されたためと説明しているが、中台関係が悪化するなか、中国が台湾に対して政治的圧力を掛けるため経済的に攻撃したとの見方が一般的だ。中国は昨年3月にも台湾産パイナップルなど果物3種を相次いで輸入を停止した過去があり、習政権としては台湾有事で軍事力を使うと世界からの非難が避けられないことから、経済攻撃によって蔡英文の政策を変更させ、圧力を掛けようとしている。

また中国は同様に、関係が悪化するオーストラリアへも経済攻撃を活発化させている。中国はオーストラリア産の牛肉やワインなど重要品目の輸出入制限に踏み切った。こういった経済攻撃もあってオーストラリア市民の間では中国への警戒感が高まっている。

シドニーに拠点を置くシンクタンク「ローウィー研究所」が6月末までに公表した世論調査によると、昨年オーストラリアが米英と共に創設した安全保障枠組み「オーカス」によって豪軍が原子力潜水艦を導入する件について、7割以上の回答者が賛成の立場を示した。オーカスは正しく対中国の安全保障協力だ。

一方、これは日本にとっても他人事ではない。関係が悪化する台湾やオーストラリアに経済攻撃を加え、関係が悪化する日本にそれを実行しないことはあり得ない。

実際、日本との間では過去に日中関係が悪化した際、中国側が日本に対抗措置を取ったことがある。2010年9月、尖閣諸島で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突して中国人船長が逮捕されたことをきっかけに、中国は対抗措置として日本向けのレアアースの輸出制限を実行した。2012年には当時の民主党政権が尖閣諸島の国有化を宣言した時、中国各地では反日デモが勃発・拡大し、日系企業の工場や販売店などが放火され、スーパーや百貨店などが破壊や略奪の被害に遭った。

中国はロシアによるウクライナ侵攻に直面し、軍事的手段へのハードルを一層高めたことだろう。そうなれば経済攻撃への比重は必然的に高まることになる。米中露による大国間対立が激化し、日中関係も悪化すれば、中国が日本に政治的揺さぶりを掛ける目的で経済攻撃に出てきても全く不思議ではない。

日本企業がそれに巻き込まれるリスクは常にあり、事前に考えてリスクヘッジすることも重要だろう。1つに、中国への依存をできる限り減らし、その分をASEANその他の安心できそうな国に振り分けることだ。専門家の間ではロシアだけでなく今後は日中関係が冷え込む可能性も指摘されており、中国から脱皮できる部分は脱皮し、その分をベトナムやタイなどASEAN諸国に振り分けるといった対策を練る企業もあるようだ。

日本にとって中国は最大の貿易相手国で脱中国は決して簡単なことではない。しかし、経済攻撃は遠くない未来やってくる確率が高いので、日本は企業を中心に備えをする必要がある。

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