3期目の習近平政権、ますます「敗色濃厚」なロシアとの付き合い方 微妙なバランスの中で探る“共闘”

治安 太郎 治安 太郎

3期目が決定した習近平国家主席は、10月の共産党大会の席で、中華人民共和国建国100年となる2049年までに「社会主義現代化強国」を進めていく意思を強調した。また台湾問題についても言及し、台湾の完全な統一は必ず実現させるとの意志を示し、平和的な統一を堅持するが武力行使を決して放棄しないと改めてけん制した。こういった姿勢からは、米中対立がいっそう激化し、台湾問題が引き金となってそれがさらに先鋭化する恐れがあろう。米中対立と同じように中台関係も近年最も冷え込んでおり、習政権3期目にとって米国と台湾が最も大きな問題となろう。

一方、習政権はロシアとどう付き合っていくのだろうか。ロシアによるウクライナ侵攻以降、中国は一貫してロシアへの制裁や非難を回避し、エネルギー分野を中心にロシアとの経済的結び付きを強化してきた。欧米からは中国はロシアを擁護しているとの批判も相次いだ。だが、ウクライナでの戦況でロシアの劣勢が顕著になり、プーチン大統領が国民の部分的動員やウクライナ東部南部4州の併合などを一方的に進めたことで、中国としてもロシア寄りの姿勢を維持することが政治的に難しくなっていった。

習氏とプーチン大統領は9月中旬、ウズベキスタンで開催された上海協力機構の首脳会合に合わせて中露会談を行い、激変する世界情勢の中で中露関係の重要性をお互いに確認したものの、ウクライナ問題について習氏は沈黙を貫き、プーチンは「中国の懸念を理解している。中立的な中国の立場を高く評価する」と言及し、双方の間で乖離が生じていることが鮮明となった。

また、11月に入り、習氏は訪中したドイツのショルツ首相と会談した。3期目になって初めての外交会談となる。欧米が核使用をちらつかせるロシアへの非難を強める中、習氏は国際社会が核兵器の使用や威嚇に共同で反対するべきだとの見解を示し、軍事侵攻を続けるロシアを念頭に核兵器の使用に反対する考えで一致した。これについてショルツ首相は、ロシアと繋がりが深い中国からも反対意見を引き出したとして会談の成果を強調した一方、習氏としても、欧米との対立が激しくなる中、欧米が懸念する核使用について同調する姿勢を示すことで中国警戒論を緩和させ、欧米の対中足並みを崩したい狙いがある。

このような昨今の事情もあり、習政権3期目はロシアと微妙なバランスを取りながら共闘を探ることになろう。共産党大会で主張したように、習氏にとって最大の競争相手は米国であり、最重要課題は台湾である。よって、それを基本原則に対米で共闘できるプーチン大統領は依然として重要な相手であり、ロシアとの政治、経済両面での関係を引き続き重視していくことになる。しかし、これまで通りロシアへ非難も制裁もせず沈黙を貫けば、欧米だけでなく他の諸外国からも中国へ疑念や不満の声が拡大する恐れもあり、習政権3期目はその間で微妙なバランスを取らざるを得ないだろう。

そして、中国としては、ロシアがどの程度接近してくるかを注視している。ロシアが核兵器を使うかどうかで世界の懸念が強まる中、メドベージェフ前大統領やショイグ国防相らロシア高官らが戦術核や「汚い爆弾」を使用する可能性を相次いで示唆する中、プーチン大統領は10月に、軍事的にも政治的にもウクライナに対して核を使用する必要はないと否定的な見解を示した。仮に核を使用すればロシアと取り巻く国際情勢は一段と厳しくなる。さすがのプーチン大統領もそれは承知しているとみられるが、もっと言えば、これはプーチン大統領の焦りの声でもあろう。ロシアには中国との関係は何としてもキープしておく必要があり、中露関係においては“ロシアの中国依存”がますます強まっている。習政権3期目としてはそこにも配慮しながらロシアとの関係を維持していくことになろう。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース