「神社の境内にて。キノコが木に生えるのはわかるけど、バランスが明らかにおかしいよね……」
草葉ノカゲさん(@Kusaba_Nokage)がTwitterに投稿された不思議な生え方をしているキノコの写真が話題になりました。
地面から突き出たように伸びる木の枝。その先端に乗っかるように生えているキノコ。その姿は、細い棒の先に立ちバランスをとる曲芸師のようにも見えます。
草葉ノカゲさんによると、このキノコを見たのは、「南東北の盆地にある、観光地の史跡からすこしだけ逸れた静かな神社」とのことで、この一角に集中して、同種のキノコがいくつか生えていたそう。しかし、言わずもがな、このような生え方をしているキノコはこれ一つだけだったといいます。
なぜこんな生え方をしているのでしょう。神社だけに、「神様のいたずら?」とも思えてしまいます。
Twitter上でもさまざまな意見が
不思議な生え方をしているキノコのツイートに、たくさんの反応がありました。
「すごいテングダケ。毒キノコだから気をつけて」
「確かにテングタケがこういう生え方しているのは見たことがない」
「コレはテングの仕業」
「命名:メダチタイダケ」
「マリオさん呼ぼう」
このキノコの種類・性質について紹介する人や、写真を見た感想を冗談っぽくコメントする人など、多くのコメントが寄せられました。その他、キノコがなぜこのような生え方をしているかについて、私見を述べる人もいました。
「たまたま菌糸が絡まってた枝を後から持ってきた可能性」
「枝の内部に菌糸が伸びて先端にキノコ作ったんでしょうか?」
反対に、「テングダケは木に生えません」「まあいたずらですねえ」など、誰かがわざとキノコを枝に刺したのでは、というような声も。さらに、「AIが生成した」という、“今風”な回答をする人もいました(笑)。
果たして真相は?詳しい状況について、草葉ノカゲさんご本人に聞いてみました。
――キノコを見つけたのは、神社の敷地のどのあたりでしたか?
草葉ノカゲさん:生えていたのは敷地の端のほうです。普通に参拝するだけだと気付かないかもしれません。
――では草葉ノカゲさんは、どのようないきさつでこれを見つけられたのでしょう?
草葉ノカゲさん:休日のランチ後に散歩がてらに神社を訪れ、ベンチに腰掛けてコンビニのコーヒーを飲んでいたところ、キノコがたくさん生えている一角が目に入りました。そのなかに妙なシルエットを見つけて近付いてみると、写真のキノコでした。
――キノコの様子はどのようなものでしたか?また、その時のご感想は?
草葉ノカゲさん:コメントにもあったように、自分も最初は枝に突き刺したイタズラだと思ったのですが、近くで見ると明らかに先端から生えているように見えました。神社という場所柄もあり、不思議なものに遭遇したような気持ちで少し興奮しました。下手に手は触れずに、写真だけ撮影して立ち去りました。
偶然、それとも故意?キノコの生え方について専門家はどう考える?
草葉ノカゲさんによると、「キノコは明らかに枝の先端から生えているように見えた」とのこと。このようなキノコの生え方について、専門家はどのように考えるのでしょう。近畿大学農学部農学研究科・応用生命化学科教授の白坂憲章さんにお話をうかがいました。
――このキノコの品種や特徴について教えてください。
白坂さん:イボテングタケだと思います。ベニテングタケやドクツルタケと同じテングタケ属のキノコで木の根に共生している「菌根菌」に分類されます。一般的には木からではなく地面から生えています。
――枝ではなく、根に共生するのですね。にもかかわらず、写真ではキノコは枝の先端から生えているように見えます。このような生え方をすることもあるのでしょうか?
白坂さん:テングダケに限らず、このような状況で生えているキノコは見たことがありません。エノキタケやシイタケのような木に生えるキノコも、ほとんどは枯れ木などの死んだ木に生えるので生きた木には生えません。
――では、なぜあのように「地面から伸びた木の枝から生えている」というような状況になっていたのでしょう?写真から、どのようにお考えになりましたか?
白坂さん:枝が最初からこの状態で土から出ているのはちょっと不自然なように思うので、少なくともこの枝は人為的に土に刺したものではないかと思います。ただ、キノコについては、土中もしくは地表近くに埋まっていた枝を取り込んで発生したのかもしれません。その枝を誰かが地面に刺したのではないかなぁ、と思いました。
――なるほど、「何らかの理由で枝にキノコが生え、その枝が人為的に刺されたのでは」ということですね。また、今回の写真とは別に、白坂さんご自身はユニークな状態で生えているキノコを見たことはありますか?
白坂さん:キノコの傘の上に同種のキノコが生えてきているところは見たことがあります。また、ヤグラタケのように、別のキノコの上に生えるものもあります。
普段は枝に生えるはずのないイボテングダケですが、地中や地表近くに存在していた小枝を巻き込んでその先端に発生し、その枝を誰かが地面に刺した――というのが、写真の状況から導き出せる推論のようです。
まさに推理小説を読んでいるような気分になりますが、偶然・故意織り交ぜさまざまな条件が重なってあのような状況になったと考えると、まさに「神様のいたずら」、「事実は小説より奇なり」という言葉が相応しいようにも思えてきますね。
少し考えさせられる面白いテーマを、Twitterを通じて提供してくださった草葉ノカゲさん。趣味で小説執筆も行っているということで、活動についてもおうかがいしてみたところ「えっ、いいんですか!では神社のご利益だと思って――」と、次の作品を紹介されました。
『断罪魔嬢レイジョーガー ~美しき悪役令嬢にして漆黒のダークヒーロー、鋼の魔拳で運命に抗う~』
昨年より長編に初挑戦したという草葉ノカゲさんが先日完結させたばかりの作品。異世界を舞台にした爽快なヒーローアクションものだとのことです。
■草葉ノカゲさんのTwitterはこちら
→https://twitter.com/Kusaba_Nokage
■草葉ノカゲさんの長編小説『断罪魔嬢レイジョーガー ~美しき悪役令嬢にして漆黒のダークヒーロー、鋼の魔拳で運命に抗う~』はこちら
→https://ncode.syosetu.com/n9917hf/
■白坂憲章教授の教員紹介ページはこちら(近畿大学 農学部のホームページ内)
→https://www.kindai.ac.jp/agriculture/research-and-education/teachers/introduce/shirasaka-norifumi-50e.html