ファミリーレストランで、子どもがジュースをこぼしてしまい、困っている母親を手助けしたというツイートに大きな反響があり、7万9千もの「いいね」が寄せられました。勇気ある行動の背景には、自身の辛い経験と、「あの時の自分がしてほしかったように助けたい」という思いがありました。
投稿者の花森はな(@hanamori_h)さんは、ある日、ファミリーレストランで2歳くらいの子どもがジュースをこぼしてしまったのを目撃。その子の母親は、「動かないでね!? お席にいてね!?」と何度も念押ししながらジュースを再度入れに行こうとしていました。
子どもを席に残してドリンクバーに行くのが不安そうだった母親に、花森さんは「ドリンクバー代わりに入れに行くのと、お子さん見てるのとどちらの方がいいですか?」とたずねました。母親が「すいません、すぐ戻りますので見ててもらっていいですか…!」と答えたので、娘と一緒に子どもの相手をした花森さん。
一度は「ほんとは最初ジュースこぼした時にお声がけするか迷ったんだよ…でもこんなご時世だから嫌かなとか出遅れてしまって」と迷ったものの、母親の手助けをした花森さんは、「次は迷わず助けるマンになりたい」と締めくくりました。
投稿には「素晴らしい 心が温かくなりました 素敵なお話、感謝します」「声のかけ方が素敵すぎる! 私もそんな風に言えるようになりたいと思いました!」「娘と2人でのファミレスは片手に娘で片手にドリンクバーなのでこういう優しい方がいるんだと思うとほっこり」など、花森さんの行為に感動する人が多くいました。一方で、「これ男がやったら不審者だよな 仕方ないけど」という人も。
普段から子ども連れの人やお年寄りに注目、できることは率先して手助け
迷いつつも声を掛けることができた花森さんに母親を手助けした時の状況や、どんな気持ちだったかなどについてたずねました。
――ファミリーレストランでの状況や、助けたときの気持ちを教えてください。
「親子は私たちの通路をはさんだ反対側に座っていて、遊び食べをするお子さんを見ながら合間にお母さんがお食事されていて、娘の小さな頃を思い出しておりました。この後にジュースをこぼされて、駆け寄ろうか迷ったのですが、小さなお子さんはマスクをできません。知らない人がいきなり来たら迷惑かな…と躊躇してしまって。
よくよく考えたらこの時に店員さんにお声がけして布巾をもらったりした方がよかったんですよね。判断が瞬時にできず、あぁ~しまったなぁ……助けてあげたかったなぁ……と思っていました」
――手助けした後は?
「余計なことしたかなぁ…とちょっと思っていたのですが、帰る時にお母さんから『先ほどはありがとうございました』と笑顔で言っていただけて本当にホッとしました」
――普段から子ども連れの方が大変そうにしているのが気になりますか。
「やはり子どもがいるからか、お子さん連れの方が困っているのはどうしても目についてしまいます。スーパーでカゴを戻してあげたり、お菓子売り場で迷子になってた子を店員さんのところまで連れていったり、公共交通機関で席を譲るようにしたりと普段から自分にできることがあれば、率先して行動するようにはしています。お年寄りの方にも同様にです」
――周りに知らない人ばかりの状況で、誰かに助けてもらいたかったことはありますか。
「私の子どもが小さかった時、ワンオペでファミレスも行きたいけれど、とてもじゃないけれど行けませんでした。ベビーカーで外出した時もあからさまに舌打ちをされたりしましたし、片手にベビーカー、抱っこ紐で子供を抱えて大量の荷物と共に駅の階段を泣きそうになりながら登ったこともあります。あまりいい思い出がありません。
だからこそ、小さなお子さんをお連れの方が困ってらしたら、あの時の自分がしてほしかったように助けたいなと思っています」
――同じように困っている人を助けたいけど、一歩踏み出せない人も多いと思いますが…。
「頂いた反応でいくつかあったのが、『助けますよ』という意思表示できるものがあればいいのになというものでした。
育児中の親御さんをサポートするのとは少し違うのですが、ヘルプマークをつけてらっしゃる方を手助けするサポートマークというのがございまして、私は普段こちらをカバンにつけております。『何かお手伝いできることがあれば声をかけてくださいね』という気持ちなのですが、まだあまり普及していないようなのですが、普及の意味もこめてつけています。
特に男性の方も助けようとしても不審がられないかというお声もありました。どうしても警戒が必要な世の中なので、手助けは難しい場合があると思います。でもあたたかく見守ってくださるだけでも全然気持ちが違います。もし店内で困ってらしたら代わりに店員さんにお声がけしてくださるとか橋渡しをして頂けたら、とても助かると思います」
――助けたいときに断られる場合もあると思いますが…。
「どうしてもお母さんがいっぱいいっぱいで『大丈夫です!』と強くお断りされてしまう場合もあると思います。私もそうでした。でもお声をかけて頂いたことは胸に残るし、その後もしばらく嬉しかったです。後でご自分が後悔するだろうなと思ったら行動してみるのもひとつだと思いますし、そうした出来事をSNSで発信するのも優しさが連鎖していくのでとてもいいと思います」
◇ ◇
幼い子どもを連れて外出した時の辛い経験から、子ども連れの人やお年寄りへの目配りをする花森さん。普段から人を助ける前提で観察しているから、助けが必要な人を見つけた時に行動に起こせたのかもしれません。相手に不審がられてしまう可能性があるなど直接の手助けをためらう状況でも、できることがあるというのは広く知られてほしいですね。
2人の子どもを育てる花森さんは、育児や日常について漫画に描きツイッターやインスタグラムなどに投稿。また小学生だった頃の息子さんが、不登校になったことについての漫画『息子が学校に行けなくなった理由』では、病院にかかったりしながら、親子で学校へ行くまで奮闘する日々を赤裸々に描いています。
■花森はな(@hanamori_hTwitter)さんのTwitter https://twitter.com/hanamori_h
■花森はな(hanamori_h)さんのInstagram https://www.instagram.com/hanamori_h/
■Walker Plus『息子が学校に行けなくなった理由』 https://www.walkerplus.com/article/1069511/
■書籍『息子が学校に行けなくなった理由』 https://www.kadokawa.co.jp/product/322206000807/