“同床異夢”の中露首脳会談 表向きは対欧米での共闘だが…習氏が気にする「プーチンリスク」

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ロシアがウクライナに侵攻してから半年が経ち、8月のペロシ訪台で中露と欧米との対立が深まる中、プーチン大統領と習国家主席が9月15日に中央アジアのウズベキスタンで会談した。ウクライナ侵攻や緊張が高まる台湾情勢などで協議し、両国の関係を深めていくことで一致した。両者が対面で会うのは、北京五輪開催直前にプーチン大統領が北京を訪問して以来となった。

昨今、中露の結束は2つの側面から顕著になっている。1つは軍事面で、この直前も9月1日から7日にかけ、ロシア軍と中国軍は日本海やオホーツク海など極東海域で大規模な軍事演習「ボストーク2022」を合同で実施し、プーチン大統領も6日に同軍事演習を視察した。北海道・神威岬の西およそ190キロの日本海ではロシア海軍のフリゲート艦3隻と中国海軍のミサイル駆逐艦など3隻が航行しているのが発見され、同6隻の艦隊は周辺海域で機関銃の射撃演習を行うなどした。

もう1つは経済面で、たとえば中国税関総署は6月、5月のロシアからの原油輸入量が前年同月比で55パーセント、天然ガスが54パーセントそれぞれ増加したと発表し、最近は8月の貿易統計で世界各国からの輸入の伸び率が前年同期比(去年8月)で0.3%に留まった一方、ロシアからの輸入が60%増加したと明らかにした。こういった中露の政治と経済の両面での接近は、欧米との対立が収まる気配が見えない中、今後さらに深まることが予想される。

しかし、中露両国にとって、対欧米で共闘という戦略が重要であることは間違いないが、両国が全く同じ立ち位置にあるわけではなく、相思相愛ではない。少なくとも、「中国にとってのロシア」と「ロシアにとっての中国」には違いがある。

まず、中国にとってのロシアだが、習近平指導部としては対欧米でロシアとの協力が重要と感じている一方、そうすることによって欧米だけでなく、ASEANやアフリカなど第3諸国からどう思われるかということを気にしている。中国が最も懸念しているのは米国の存在以上に、諸外国の中国からの離反であり、ウクライナ侵攻という国際法違反を犯したロシアを第3諸国がどう見ているかを注視している。習政権としては、“国際法違反を犯したロシアに隠れ蓑を与える中国”というイメージが先行することは避けたく、何が何でもロシアとの共闘というわけではない。

一方、ロシアにとっての中国だが、今日、習氏がプーチン大統領を必要としている以上に、プーチン大統領は習氏を必要としている。国際法違反を犯したロシアのイメージが悪化したことは間違いなく、欧米主導のロシア制裁、それに付随する欧米企業による撤退や規模縮小などの自主規制により、ロシア経済は一定のダメージを受けた。プーチン大統領としては経済大国中国との関係を強化することで、被った経済的ダメージを相殺したい狙いがある。また、一帯一路によって中国の世界的な影響力が高まる中、中国との結束を示せば、中国の影響力が強い国々(カンボジアやミャンマー、ラオスなど)との間でも政治的摩擦を少なくできるとプーチン大統領は考えているはずだ。

プーチン大統領は、北京オリンピックとパラリンピックの間に侵攻を決断した。習氏は北京五輪の偉大な成功を開催前に強調していた。こういった観点からは、中国はロシアに泥を塗られた形になったと言え、習氏の中にはプーチンリスクというものも存在するだろう。今後も表向きには中露共闘が進むのは間違いない。しかし、それは相思相愛ではなく、今後両国の間で亀裂や不和が拡がる可能性も十分にある。

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