湊川隧道のある街「ええとこええとこ新開地」と謳われる街はどのくらい「ええとこ」なのか?

脈 脈子 脈 脈子

 兵庫県神戸市兵庫区にある日本初の河川トンネル「湊川隧道」。氾濫を繰り返していた旧湊川の流れを人工的に変えるため、1901年に作られた隧道の魅力を伝えるべく、2021年に結成されたのが湊川隧道部(以降、隧道部)です。その隧道部による今年度はじめてのツアーが開催されました。「地域の宝である湊川隧道を未来につないでいきたい」と集まった8人の若手メンバーが企画するツアーとは?魅力に迫ります。

街の歴史、地元の味...盛りだくさんのツアー

 この日開催されたのは「部長・副部長と巡る湊川隧道ツアー」。湊川新開地に長く暮らしている部長の前畑温子さんと副部長の西島陽子さんがガイドを務め、湊川隧道とその付近を巡ります。

 ツアーのスタート早々、集合場所から地上に上がる階段を前に「みなさんのために、レッドカーペット敷いておきました!」と笑いを取ると、一気に和やかに。掴みがうまい....!

 階段を上がれば、そこは新開地二丁目商店街。まさに旧湊川だった場所です。六甲山から流れてくる土砂が堆積したことで、周辺の平地よりも水面が高い「天井川」だった旧湊川。川の付け替え後は整備され「湊川新開地」や「湊川公園」として生まれ変わりました。

 新開地という地名は、川だったところに新たに街を開いたことから付けられたとのこと。水が流れていた時代のことを思い浮かべながら、街を散策します。

 1913年に開館し「西の帝劇(帝国劇場)」と呼ばれた洋風劇場「聚楽館」(1978年閉館)の跡地や、路地の奥にひっそり存在する見どころを見学。道中では最近オープンしたお店にもいくつか出会うなど、街の盛り上がりを感じます。

 ディープスポットを巡りながらアーケードを抜けて、地元民にはおなじみだという中華料理店「春陽軒」を見学。ここのみそ味の肉まんがいかに美味しいかという話を、いい匂いで満たされた店先で聞いていると、食べてみたくなるのが人の性というもの...。

 そこは抜かりないのが、このツアー。参加費には飲食代が含まれていて、できたての肉まんが1つずつ配られます。この他、オリジナルの土鍋焙煎機で自家焙煎した豆から淹れるコーヒーが評判の「tent-coffee」、後世に残したいミックスジュースとしてマツコ・デラックスさんの番組でも紹介された「マルカジュース」など、地元で親しまれている味を堪能します。

 川とともに生きる街、湊川新開地の味わい深さを存分に感じながら、月に1度の一般公開中の湊川隧道に到着。120年の時を超えてここに建ち続ける煉瓦の壁に囲まれた隧道内は、外の暑さを忘れさせてくれるような涼しさ。隧道をたっぷりと見学した後も、ほど近くにあるマルシン市場、東山商店街へと足を伸ばします。ここが、また活気にあふれていて「地域の台所」感があって、めちゃくちゃいい!

 最後までぎっしり内容の詰まった約3時間のツアーが終わった頃には「また来たい!」「商店街でゆっくり買い物したい!」という思いに溢れて、すっかり湊川新開地のファンに。どうやら筆者だけでなく、参加者は「楽しかった」「また遊びに来ます」と口々に言い合い、感激している様子。参加者の心と胃袋を掴んだツアーがどんな風に企画されたのか、隧道部の皆さんにお話を聞きました。

湊川隧道がある街のファンになってほしい

−−このツアー、街の魅力が存分に伝わる素晴らしい組み立てだったと思います。湊川隧道の見学と、街歩き、地元の生活が垣間見える商店街巡りをセットにされたのにはどんな想いがあったのでしょうか?

「湊川隧道だけを見学するのではなく、隧道がつくられた経緯やまちの雰囲気を知っていただけるよう、必ず地域を歩くことを大切にしています。そうした場所をたくさん巡ることで、参加者の方に湊川隧道がある街・兵庫区のファンになってもらえたらと、このツアーを企画しました」

−−街歩きのコースやお店はどのようにセレクトし、決められたのでしょうか?

「湊川隧道がつくられる前に川だった場所や、周辺にある魅力的な場所、商店街、地域の歴史がわかるスポットを選んでいます。食べ歩きは、昔から兵庫区で愛されているお店や、部員のおすすめのお店をセレクトしました。

−−本当に美味しいお店ばかりでした。こんなお店が家の近くにあるなんて、羨ましい!

「産業遺産は、一度行くとイベントなどがない限り、なかなかリピーターにはつながりにくいのが現状です。ツアーでおいしいご当地グルメを食べ歩きすることによって「また食べたい!」「今度は家族や友達と食べに来よう」と思ってもらえたら嬉しいです」

ツアーは秋以降も続々と

 単体で見ても素晴らしい湊川隧道という近代⼟⽊遺産。湊川新開地の歴史や日常の風景をあわせて見ることで、街という文脈の中にある湊川隧道の姿や、それを大切に思う人々を垣間見ることができました。

 10月以降も隧道部によるツアーが企画されているとのこと。湊川隧道の月に一度の一般公開日に合わせて、10月は「部長・副部長と巡る湊川隧道ツアー」を開催。9月12日より参加申込みがはじまっています。以降は11月19日(土)、12月17日(土)を予定しており、11月については、バスに乗ってのツアーが計画されているとのことです。

 今後の予定は、湊川隧道部のFacebookページにて。

◇ ◇

「第3回 部長・副部長と巡る湊川隧道ツアー」
日時:2022/10/15(土) 13:00〜16:30
集合場所:新開地駅西改札前
料金:3500円
定員:20名(先着申込順)
主催:湊川隧道部
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、マスクを着用してください。

▼湊川隧道部Facebookページ
https://www.facebook.com/zuidobu

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