日韓関係改善に暗雲?…ユン大統領の支持率、就任3カ月で3割近く低下 試される韓国国民の世界観

治安 太郎 治安 太郎

5月にユン大統領が就任し、戦後最悪といわれたムン政権時の日韓関係からの脱却が期待された。当然ながら、韓国大統領の任期は5年であり、日韓関係改善を求めるユン政権と日本との関係は今後より改善、緊密化していく可能性は高い。特に、安全保障上、バイデン政権も日韓関係の改善を強く望んでおり、日米韓の安全保障協力はいっそう深まることだろう。しかし、就任から3カ月が過ぎ、筆者には2つの大きな課題が脳裏に浮かぶ。

1つが中国との関係だ。日本との関係改善、米韓関係重視、クアッドやNATOへの接近などを重視するユン政権だが、やはり最大の貿易相手中国との関係には一定の配慮をせざるを得ない状況だ。8月はじめ、米国ナンバー3ともいわれるペロシ米下院議長が中国からの圧力に屈することなく台湾を訪問したが、ユン大統領はその後韓国を訪問した同議長とは会わなかった。韓国政府は大統領が休暇中だったので会談しなかったと明らかにしたが、政治的には極めて大きなポイントになった。

日米やクアッドとの関係重視を表明したことから、多くの政治家や外交・安全保障専門家は会談すると思っていたはずだ。しかし、ペロシ氏の訪台では中国が台湾を包囲するように軍事演習を実施するなど、これまでにない強い憤りと警戒感を示していたことで、韓国としては政治的バランスを取らざるを得なかった形だ。この出来事は、韓国が日本以上に米中間で難しい立場にあることを露骨に示す結果となった。今後もユン大統領は、“日本や米国に向かって歩く一方、常に背後で中国をみないといけない”というジレンマを抱えながら外交を展開することになろう。

もう1つの課題が支持率だ。8月12日に韓国ギャラップが明らかにした最新の世論調査によると、ユン大統領の支持率は25%、不支持率は66%となった。就任時、支持率は52%だったことからこの3カ月で3割近くも支持率が低下している。

支持率低下の理由には人事や経験不足などが挙げられているが、この状態が長期化すれば、日本との関係改善、米韓関係重視、クアッドやNATOという政策ビジョンも徐々にフィクションと化す可能性が出てくる。こういった政策ビジョンが国民受けしないことになれば、ユン政権としてもそれを政治的にやりにくくなる。何があっても国民からの圧力で辞任することは避けたいはずだ。

現状変更を続ける中国、ウクライナに侵攻したロシアなど、日本にとって厳しい安全保障環境を考慮すれば隣国韓国との安全保障協力は極めて重要となる。しかし、ユン政権が支持率という課題に陥ることになれば、もうそれは韓国国民の世界観が試されることになろう。韓国にとっても、核ミサイル開発を続ける北朝鮮、海洋強国を目指す中国の存在は大きな脅威なはずだ。仮に、台湾有事となれば、それは日本だけでなく韓国の海運、シーレーンの安定を破壊することにもなる。韓国がグローバルな韓国になるためには、まずは韓国国民が周辺海域で起こっていることを理解し、それに基づいて賢い選択ができるかにかかっている。

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