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日本の軍国主義の歴史を強調する中国 国難に打ち勝ったナラティブで共産党統治を正当化 安全保障政策の大転換を進める日本を牽制 

和田 大樹 和田 大樹

中国外務省の報道当局者が広島への原爆投下の日に際して「日本軍国主義による侵略の教訓を踏まえ、警鐘を鳴らすべきだ」と主張したことは、同国が対日外交や歴史認識問題において一貫して採用してきた立場を改めて示すものである。

中国がなぜたびたび「日本の軍国主義」という文脈を持ち出し、批判を繰り返すのか。その背景には、単なる過去の歴史的経緯への固執ではなく、現代の政治的・国際的な戦略に基づく明確な狙いや真意が存在している。

過去の国難に打ち勝ったというナラティブ

まず、最大の要因として挙げられるのは、中国国内における政権の正統性維持という内政的な目的である。

現代の中国において、中国共産党が強固な一党支配体制を維持し続けている歴史的根拠の大きな柱の一つが、日中戦争(抗日戦争)における指導的な役割と勝利である。日本軍国主義による侵略の歴史やその惨禍を繰り返し強調し、国民の記憶に留め続けることは、共産党統治の正当性を内外に誇示し、国家の求心力を高めるための極めて重要なイデオロギー的装置となっている。過去の国難に打ち勝ったというナラティブは、現体制への支持を固める上で欠かせない要素なのである。

過去の侵略責任を定期的に喚起

次に、外交および国際世論戦における戦略的な意図が挙げられる。中国は歴史認識問題を巡る議論において「被害者」としての立場を前面に出すことで、道徳的な優位性を確保しようと図っている。

広島や長崎への原爆投下は、世界的に核兵器による惨禍の象徴として捉えられているが、中国はそこに日本軍国主義による侵略の加害の歴史を意図的に結びつけて言及する。

これにより、日本を単なる原爆の犠牲者としてのみ位置づけるのではなく、戦争を引き起こした加害者としての側面を国際社会に想起させ、日本側の歴史修正主義的な動きに対する牽制を行っている。第二次世界大戦後の国際秩序はいわゆる戦勝国体制を基盤としており、中国はその中核的な構成国としての自負を持っている。過去の侵略責任を定期的に喚起することは、この戦後秩序における自国の優位な地位を正当化する手段でもある。

安全保障政策の大転換を進める日本を牽制

さらに、現代の日本による安全保障政策の変化や防衛力の強化に対する強力な牽制という意味合いも強い。

近年、日本が防衛費の増額や反撃能力の保有など、安全保障政策の大転換を進めるなかで、中国は日本の動向を注視している。中国の外交当局が軍国主義という強い言葉をあえて使うのは、日本の右傾化や再軍備化への懸念をアピールすると同時に、アジア近隣諸国や国際社会に対して日本の軍事大国化への警戒が必要であるというシグナルを送り、日本を外交的に包囲する現実的な政治目的があるためである。

加えて、こうした歴史問題の定期的な喚起は、日中関係における交渉カードとしても機能している。二国間関係で中国側が優位に立ちたい局面や、日本側の対中政策に対して不満や懸念を抱いた際、歴史認識をあえて前面に押し出すことで、日本政府に対して政治的なプレッシャーを与え、自国の要求を受け入れやすくさせるための実利的な外交ツールとして巧みに利用されている。

このように、中国が日本の軍国主義を批判し続ける背景には、歴史の教訓を風化させないという建前や国内向けの統治基盤の強化だけでなく、国際的な歴史戦における主導権の掌握、現代日本の安全保障政策に対する牽制、そして外交的圧力の行使という、極めて複合的かつ実利的な狙いが存在しているといえる。

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