「写真の商家町屋に凹んだスペースがある理由は?」 京都の女将の問いかけに、迷答続出「ココに公衆電話が?」「新撰組さんに隠れる場所を提供」

塩屋 薫 塩屋 薫

「【問題】これは築150年の商家町屋です。写真左手にポッカリと凹んだスペースがあります。なぜでしょうか」と、京都の町屋の外観写真とともにTwitterに投稿されたあるクイズ。リプ欄にはさまざまな予想が寄せられ、「やべえ…答えが気になりすぎてフォローしちゃった…」という人も。

こちらを投稿したのは、扇子の製造・卸業を営む「大西常商店」(京都市下京区)4代目若女将の大西里枝(@RieOhnishi)さんです。

今回のクイズに対して、
「町を守ってくれはる新撰組さんに隠れる場所を提供」→「丸見えやないか…ッ!」、
「ココへ公衆電話が置いていたんでしょうか??」→「たしかにおいてそうなスポット!いい塩梅に収まりそう」、
「そこに隠し通路があるんですね」→「核シェルターにつながる通路が。。。(ない)」、
「雨宿り出会いの軒下 親密になれそうな、ちょうど大人2人が入れる広さ」→「ロマンティックエリア!!!」、
「ここでクラーク・ケントがスーパーマンに変身する。近頃は電話ボックスが少ないので、このスペースがありがたい。南向きなのは、冬の寒さを配慮した京都の人々の気遣い」→「あったかいとこで電話しとくれやす、という気遣いですね!w」
など、大西さんによるユーモラスな返事で楽しいやり取りが展開されました。

そしてこちらの正解は、裏鬼門(西南角)の鬼門除けで、あえて建物を欠けさせて、除けている方角なのだそう。京都ならではの様々な風習を発信している大西さんに詳細を教えてもらいました。

京都市内中心部、特に田の字といわれるエリアでは非常に多い

――色々な予想が出ていましたね。改めまして、鬼門とは?

鬼門は北東角、裏鬼門は対角線上にある西南角を指します。特に鬼門は昔から鬼が出入りする方向だと言われており、忌み嫌われています。京都御所も北東方向の角は「猿が辻」と呼ばれており、角がありません。

――京都では、一般的なお家でも鬼門除けを見かけますか?

民家でも、鬼門除けとして白い石を敷き詰めたり、南天(難を転ずるに通じる)を植えたりしています。京都市内中心部、特に田の字といわれるエリアでは非常に多いですね。一般のお家はもちろん、マンションの集合住宅などにも鬼門除けが付いていることもあります。

お盆の謎風習、無言で追い出すスタイルが京都らしい

また、大西さんがお盆の時期に投稿した、「あらめの煮汁ぶち撒け祭!異臭ヤバすぎて笑う。これマジでなんの意味があるんや!!!」と、店の前に煮汁を撒く動画は、10万回以上も再生される反響が。この謎風習についても聞きました。

――お盆の8月16日の朝に煮汁をぶち撒ける動画には驚きました! 代々受け継がれている京都の風習なのでしょうか?

はい、もともと京都では8のつく日にあらめを炊いて、その汁を走り元に流すという習慣があります。「メ=芽」が出るということで商売繁盛を祈ったものだと聞いております。ただし、お盆の時だけは、追い出しあらめとして門口に撒くそうです。御先祖様がこの世に未練を残さず、あの世にお帰りになるとのこと。謎風習ですが、無言で追い出すスタイル、京都らしいですね(笑)。

――他にも、お盆ならではの風習がありますか?

お盆が近づくと、お精霊(しょうらい)さん(=ご先祖)をお迎えに六波羅蜜寺の鐘をつきに行きます。冥界に通じているといわれていて、この音を頼りにご先祖様の霊がこちらに帰ってこられるといわれています。この時、高野槙の枝をもって鐘をつくのですが、この枝にご先祖様がくっついて家に戻ってくるというスタイルです。

――お盆以外の風習でも、珍しがられた事はありますか?

端午の節句には、家の門口で菖蒲をバシバシ叩いて厄を払う「菖蒲うち」というのもあります。これは皆さんに珍しがっていただきますね。この動画は追い出しあらめよりバズりました!

――京都生まれの方からみても、日々京都のここがおもしろい(もしくは変わってる?)と感じる事はありますか?

大体のことを「おおきに」の一言で終わらせるのが個人的にはおもしろいです。「ありがとう」はもちろん、「こんにちは」「すみません」「ごめんください」「失礼します」、大体「おおきに」で解決します。あとは「へ」ですかね。「へ!」は「ちょっと!」ですし「へえ」は「はい」、「へえええ」は興味ない時の相槌、「へえええええええ?」は「ほんまかいな」という感じです。

――使い分けが多様ですね(笑)。京都の風習を発信されるようになったきっかけ、そしてその思いを教えてください。

私は京扇子の製造を生業にしておりますが、これも京都の文化の1つです。扇子は京都の文化と共に育まれた商品ですから、京都の風習や行事などもあわせて発信していくことに意味があるのでは、と思っています。

◇ ◇

大正2年創業の「大西常商店」では、現代の暮らしに合わせた伝統文化の魅力を提案すべく、扇子の骨を活用したルームフレグランスなども開発しているそう。また、京都らしい風情を楽しめるよう、扇を投げて的を落とすお座敷遊び「投扇興」(2200円)や生活様式を学べる京町屋の案内(500円)、オリジナル扇子を作る「ぬりえで楽しむ絵付け体験」(2970円)などの文化体験も実施しています。今後も若女将が四季を通してどんな珍しい(?)風習を紹介してくれるのか期待大です。

■「大西常商店」公式サイト https://www.ohnishitune.com/
■大西里枝(@RieOhnishi)さんTwitter https://twitter.com/RieOhnishi

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