寒波とは?原因や影響、対策方法を徹底解説

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冬になると、寒波のニュースを見聞きすることも多くなります。寒波によって、私たちの生活には大きな影響が出ます。
「そもそも寒波とは?」、「寒波がきたらどんなことに注意しなければならないの?」、「なぜ寒波がやってくるの?」、「寒波に備えて、何をすればいいの?」などなど、寒波に関するさまざまな疑問について、気象予報士が解説します。


寒波とは

寒波(かんぱ)とは、主に冬期において、広い地域に数日間(2〜3日またはそれ以上)にわたって顕著な気温の低下をもたらすような寒気が到来する現象のことです。

ちなみに「寒気(かんき)」とは、周りの空気に比べて低温な空気のことをいいます。冬に「非常に強い寒気が流れ込んで日本海側では大雪のおそれ」といった使い方をすることもあれば、夏に「上空に寒気が流れ込んで大気の状態が不安定になっている」というように、周囲の空気との相対的な温度差を表す言葉として通年使用します。
寒気の中でも、期間、範囲、低温の程度が大きい場合には「寒波」が使われます。

なお、ニュースや天気予報で「大寒波」や「最強クラスの寒波」ということがありますが、これには明確な定義はありません。ただ、上空の予想天気図や気温から、過去観測された最低気温と比較しても記録的な気温が数日間予想され、その影響が大きいと予想される際に、より注意して欲しいという意図を込めて使われることがあります。
「最強クラスの寒波」の場合、「今シーズン最強クラス」であれば、この冬一番という意味になりますし、「過去最強クラス」になれば、過去の観測記録に匹敵するレベルのかなりの低温が予想されている状態になります。ニュースなどでは「最強」という言葉だけが一人歩きしがちですが、一緒に使われる言葉にも注意して情報をみるようにしましょう。

「寒波」のイメージ


寒波による影響は?交通網のマヒや断水、停電のおそれも

強い寒波が襲来する際には、大雪や低温、暴風、猛ふぶきなどに警戒が必要です。寒波がもたらす荒天によって、以下のような影響が懸念されます。

・大雪や暴風による飛行機の欠航、電車・バスの運休、道路の通行止めなどの交通網の乱れやマヒ
・大雪による車の立ち往生
・視界不良や道路の積雪・凍結による車の事故、歩行者の転倒
・低温による水道管の凍結、破損、断水
・暴風や積雪・着雪による倒木、停電、農業施設(ビニールハウスなど)や車庫の倒壊
・暴風や着雪による停電(送電線のショートや断線)

例えば国内では、2018年1〜2月に32年ぶりとなる記録的な寒波に見舞われ、全国の広い範囲に影響がでました。西日本・東日本を中心とした低温と、北海道から北陸の日本海側にかけての大雪により、多数の地点で最低気温や積雪深の観測記録を更新。とくに影響の大きかった北陸地方では、長時間にわたる車や列車の立ち往生が発生。さらには水道管凍結による大規模な断水も発生し、いずれも自衛隊の災害派遣が行われました。

また海外でみてみると、2021年2月にアメリカテキサス州で大寒波による大きな被害が発生しています。ヒューストンで1895年の記録に並ぶ最低気温約13°F(約-11℃)を観測するなど、1週間以上にわたり雪や凍雨、著しい低温に見舞われました。大規模停電や路面凍結による交通事故などで220人以上が死亡、240億ドルにのぼる経済被害が発生したと報じられています。

寒波によるさまざまな影響


寒波をもたらす原因は?遠く離れた大気や海洋、海氷が関係する!?

では、なぜ寒波がやってくるのでしょうか。
寒波は、複数の要因によってもたらされることが多く、事象によってその要因や組み合わせも異なります。そのため、一概にはいえないものの、次のような現象が関係していると考えられています。

一つが、「北極振動」と呼ばれる大気現象です。北極振動とは、高緯度の北極域と中緯度域との間の地上気圧がシーソーのように変動する大気の変動パターンのことを指します。気圧がシーソーのように変動することで、北極域の寒気をため込んだり、放出したりを繰り返します。
寒気が放出される(北極振動が負の状態といいます)と、ため込んでいた寒気が中緯度に流れ出し、寒波が起こりやすくなります。この寒気の南下は、とくにユーラシア大陸、アメリカ大陸で顕著な傾向がありますが、日本付近にも影響が及ぶことがあります。

もう一つが、熱帯海域の「ラニーニャ現象」です。ラニーニャ現象が発生すると、西太平洋熱帯域(インドネシア付近)の海面水温は高くなり、対流活動が活発になります。
この地域の対流活動が活発になると、その影響が中緯度まで伝わり、日本付近では偏西風が南に蛇行して北からの寒気の影響を受けやすくなります。

さらに、近年は北極海付近の海氷の影響も注目されています。
ノルウェー沖(バレンツ海)の海氷が少ないと、北極海を通る低気圧の経路が北上し、一方で大陸上のシベリア高気圧は勢力を強めてどんどん寒気をため込むため、日本付近も寒波の影響を受けやすくなります。
また最新の研究では、アラスカ沖(チュクチ海)の海氷が減少すると、その上空では北極域の寒気が北に蛇行した偏西風によって東西に押し出されるようにして南下し、アメリカと東アジア付近に寒波をもたらすということもわかってきました。

このように、寒波の襲来には、地球上の大気や海洋、海氷といったさまざまな現象が深く関わり合っています。

寒波をもたらす要因の代表例


寒波への備え・対策を知っておこう

寒波が予想されている時には、事前にしっかり備えをしておきましょう。

(1)停電への備え
停電時の防寒対策として、電気を使用しないカセットガスストーブや灯油ストーブなどを準備しておきましょう。また、カイロや湯たんぽ、毛布、防寒シート、防寒着、寝袋などの防寒グッズもそろえておきましょう。
電源を確保するためのモバイルバッテリーやポータブル電源、照明を確保するための懐中電灯やランタンなども必要になります。充電や予備の電池なども確認しておきましょう。
そのほか、IHの場合はカセットガスコンロがあるとよいでしょう。

(2)水道管凍結・断水への備え
水道管凍結防止のため、屋外の水道管にタオルや保温材で保温する、蛇口から少量の水を出しっぱなしにしておく、水道管から水を抜いておくなど、事前に対策を行っておきましょう。

◆関連記事:水道管凍結の予防方法 凍結しやすい気温や対策・凍結時の対処法について

また万が一の断水に備えて、飲料水や生活用水も用意しておくと安心です。生活用水は給水タンクや空のペットボトルなどに貯め置くか、お風呂の残り湯を浴槽に貯めたままにしておいたりしておくとよいでしょう。

(3)食料や燃料の備え
大雪などによって交通網がマヒすると、物流への影響も見込まれます。事前に食料品を少し多めに買っておきましょう。ただし、買い占めは厳禁です。普段からローリングストックをしておけば安心です。
また、暖房用の燃料も少し多めに確保し、車のガソリンは満タンにしておきましょう。

◆関連記事:ローリングストックについて

寒波への備え

(4)道路や交通機関の乱れへの備え
寒波による大雪や暴風、低温が予想されている際には、できるだけ不要不急の外出は控えましょう。
どうしても外出しなければならない場合には、交通情報をこまめに確認し、時間に余裕をもって行動なさってください。状況によっては、迂回ルートの検討も必要です。

公共交通機関を使う場合、交通機関の大きな乱れが予想されます。スマートフォンでの情報入手や連絡が必要になることが想定されるため、フル充電したモバイルバッテリーの携帯も忘れずにしましょう。

車の場合は、スリップ事故やスタックによる車の立ち往生を防ぐため、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンの準備をしておきましょう。また積雪が予想されている際には、万が一の立ち往生に備えて、防寒グッズや非常食、飲料水、ブースターケーブル、牽引ロープ、スコップ、長靴などを携帯しておくと安心です。

◆関連記事:もしも雪道で立ち往生してしまったら 最も気をつけるべきことは?

寒波襲来時の運転で準備しておきたいもの


この冬(2025年1、2月)の予想 寒波の影響は?

2025年1~2月にかけては、ラニーニャ現象発生の定義は満たさないものの、ラニーニャ現象に近い傾向が予想されています。この影響により、上空の偏西風は日本付近でやや南に蛇行する見込みです。また、シベリア高気圧は南東側への張り出しがやや強い時期があり、アリューシャン低気圧は西側で強いでしょう。
このため、日本海側を中心に一時的に寒波の影響を受ける可能性もありそうです。日々、天気予報をチェックして、寒波到来が予想された際には早めの備えをなさってください。

以下の記事では、この冬の予報について、さらに詳しく解説しています。この冬の天候がどうなるか気になる方は、ぜひ合わせてチェックしてみてくださいね。

◆関連記事:「新年は厳しい寒さでスタート 一転3月は全国的に高温 春の訪れ早まるか 3か月予報」

2025年1月〜3月に予想される海洋と大気の特徴

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