近年、移住労働者や留学生の急増によりベトナム人に対する種々の差別問題が発生しているようだ。筆者は比較的外国人が多い地域に住んでおり、たまに地元住民の彼らに対するあからさまな差別発言を耳にすることがあるのだが、そのたびに人間の狭量さや愚かさにがっかりしてしまう。
日本国内での差別問題から入ったが、先日、SNSのタイムラインでこんなエピソードを見かけた。
「1件目のホームステイ先にいる時、友達と週末ライブにいく約束をした。帰って早速伝えると快く了承。楽しみに当日を迎えた。夕方になりそろそろ出掛けないのかとチラっと見たら、視線に気づいてくれた様子。車にみんなで乗り込んでライブ会場まで…と思ったら、なぜか教会に。寄り道?遅れちゃう…汗
『あの、約束の時間が迫ってるんですけど…』と伝えると『アナタの約束と私の約束の優先順位どちらが高いと思ってるの?』とまさかの返しに呆然…。さすがにプツンッと何かが千切れる音が聞こえた。思わず『私にも約束があるんだ!』と日本語でキレてしまった。すると…、『In English.』英語で言えと
悔しくて、涙が止まらなかった。言語の壁。伝わってたとしてもスルーされる状況を打破する力も無く。当時の私は“自分の英語力のせい“だと自分を責めた。この理不尽が人種差別とも知らずに。翌日友達に平謝り。『なにそれありえない…何も悪くないよ』と一緒に悔し泣き。この対応に心の底から救われた。」
ライティングサロン「らいぷら」講師として活動するみかんさん(@mikakawa1)の投稿で、彼女が16歳でアメリカでホームステイしていた際のエピソードだ。この他にもみかんさんは朝5時に起きて自分の身長より大きなダルメシアンの散歩や5人の子どもの世話を課せられ、最終的には「アジア人を家に入れたくないの」と家を追い出されてしまったという。日本人も海外にいると人種差別を受けることがあるという事実にあらためてはっとさせられた。
みかんさんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「私もホームステイしてた時、ホストファミリーの贔屓のバスケットボールのチームが負けたからとの事で夕食作ってもらえませんでした 当時は文句も言えず悔しい思いしたのを思い出しました」
「わざとやってる感がアリアリですもんね。これほどあからさまな人種差別もめずらしいと思いましたが、ひょっとしたらこの類の話って、まだまだはびこっているのかな」
「13年アメリカに住んでいたけど、人種差別は受けたことがないから、そんなあからさまに差別する人がいるなんてビックリ ティーンエイジャーのときにそれは、本当に辛かったね」
など数々の共感と同情の声が寄せられているが、果たしてこの事件はどのような背景があったのだろうか。みかんさんにお話を聞いた。
ーーホームステイ先の家庭やみかんさんに差別的な態度をとった方についてお聞かせください。
みかん:場所はシアトルで、ホームファミリーはお父さんがパイロット、お母さんは専業主婦、子供が5人いる家庭でした。私に差別発言をしたのは40代のお母さんです。
ーー車中で差別発言を受けた際の相手の態度についてお聞かせください。
みかん:友達との約束したライブに向かってると思いきや教会に到着し、ライブ会場とは全然違ったのでびっくりして問いただすと「アナタの約束と私の約束どちらが優先度が高いと思ってるの?」と威圧的に言われました。泣いて抗議しても聞く耳持たずで、英語が聞き取れんと言わんばかりでした。
ーー今回紹介されたエピソード以外にも、今考えると差別だったと思われることはありますか?
みかん:食事の時、他の家族はジュースなどを飲んでいるのに、私には水道水しか出ませんでした。また食事も野菜ばかり。「日本人は野菜が好きなのよね?」と言われました。
◇ ◇
ホームマザーは信仰心が強いのか、よく教会に通う人物だったということだが、肝心の「汝の隣人を愛せよ」(新約聖書―マタイ伝・二二)というキリスト教の教えは理解できていなかったようだ。
外から来た人、肌の色や習慣の異なる人を問答無用で差別してしまう者は洋の東西を問わず存在するということだが、果たしてそのような態度は現代人として理性的で成熟したものだと言えるだろうか。もし彼我の差異が軋轢を生みかねないものだったとしても、先人として温かい気持ちで教え導いたりすり合わせたりすることで解決できることはないだろうか。
もし自分が差別を受ける境遇に陥ったら…もし外国人に対し差別感情を抱いてしまったことがある人は今一度それがどんな悲しみを引き起こすか考えてみてほしい。
みかんさん関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/mikakawa1