きっかけは延暦寺の「不滅の法灯」、蝋を使った画期的で斬新な書道 「漢字の奥深さを知ってもらいたい」

八木 純子 八木 純子

 芸術性豊かで、カラフルな「書」が注目を集めている。蝋(ろう)を駆使し、文字を書きあげる画期的な書道「ろう彩書®」を生み出したのは、いま注目の書道家、浅田信子(雅号・麗光)さんだ。アトリエを訪ね、話を聞いた。

ろうそくの炎の温かさに魅せられたのがきっかけ

 書家の世界では「麗光」の雅号で知られる浅田信子さん。数奇な運命を乗り越えたことで「自分にありがとう」と言える後悔のない人生を歩むと決心。長年にわたり書の魅力を多くの人に広めてきた大阪出身の書道家だ。

 その浅田さんは書を通して「人のつながりを大切にしながら、もっと多くの人を幸せにしたい」と考えていた。滋賀県の山中に数カ月間こもり、書に明け暮れたこともある。そんな折、接したのが比叡山延暦寺で約1200年間消えることなく灯され続けているという「不滅の法灯」の明かり。その時、素直に炎のもつ温かさに魅せられたのだ。

 「寒い冬でしたが、炎を見ているだけで、寒さも忘れ、温かな気持ちになりました」。そして、ロウソクなどの炎には人を癒す力があると実感し、書にも応用できないかと考えるようになったという。

 実はそれまでにも模様部分を蝋で防染し、染色する日本の伝統的な染色法「ろうけつ染め」に興味を持っていたといい「書にも応用できる」と、ひらめいたのだ。

 しかし、書に欠かせない和紙を使い、蝋で書いてみたところ、どんな和紙もにじんで使いものにならなかったという。数年かけて和紙の試作をしてきたが、あきらめかけたころに出合ったのが襖紙だった。

 「襖紙も試行錯誤しながらですが、ようやく、蝋にあうものを見つけました」

 そのおかげで、5年前「ろう彩書®」が誕生し、2020年7月には商標登録を取得した。浅田さんによれば、ろう彩書®は蝋で「氣」を込めて字を書き、彩色してできあがるとのことで、作品は文字自体にリズム感があり、イキイキとしていて、見ているものを元気にしてくれる力も感じる。

 「決して難しい書ではありません。誰でも愉しむことができる。そんな書道です」と浅田さんは話す。

日本独自の文化を世界に伝えていきたい

 そんな浅田さんは2019年4月、襖と縁のある建具店で作品展「麗光展」を初開催し、話題に。同年5月には第1回「ジャパンあるていすと展」(八尾市古民家茶吉庵)に出展したところ、作品の「仔龍」が八尾市長賞を受賞し、ろう彩書®とともに、書道家としての名前も広く知れ渡ることになった。

 コロナ禍でも精力的に活動を続け、2020年には大阪府柏原市に「アトリエ麗光」を開設。テレビの取材なども入り、その名前はさらに広がっていった。現在は独自の書を伝えるべく門下生を育成。書を通じて礼儀、感謝、愛情の大切さや日本独自の文化を世界に伝えていくための活動を行っているという。

 この6月からは海外からの旅行者も緩和され、浅田さんの作品を鑑賞したいという外国人の声も増えつつある。浅田さん自身も「海外での活動もしていき、漢字の奥深さを知ってもらいたい」と意欲的に語る。

 同時に力を入れているのが「闘書®」(商標登録取得)だ。こちらも浅田さんが考案したもので今年の3月には京都の金戒光明寺でのマルシェに合わせ、闘書大会を実施。関西一円から老若男女が参加した。

 「書道とは己との闘いでもあります。邪念を捨て、その瞬間に集中する。一生懸命にいまを生きることにつながっていけばと、と願っています」と力強く語ってくれた。今後も大阪府かを中心にアトリエ教室を開催していく予定。浅田さんワールドから目が離せそうにない。

アトリエ麗光
大阪府柏原市大正1-3-34
メール:madamnobuko@gmail.com

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