マタニティーマーク誕生16年「付けても席譲ってもらえない」妊婦の嘆き、今も?

堤 冬樹 堤 冬樹

 妊婦に気付く目印となるマタニティーマークを国が発表して今月10日で16年になる。読者からの投稿が載る京都新聞の「窓」欄には、公共交通機関などでつらい体験をした妊婦や、対応に戸惑った周囲の人など、さまざまな声が寄せられてきた。その一部を紹介する。

 厚生労働省は2006年3月、おなかが目立たない妊娠初期の人でも安心して外出できるよう、マタニティーマークを公表した。使用は原則自由で、自治体や鉄道会社がマーク入りバッジを配ったり、妊婦向け雑誌の付録になったりして浸透してきた。

 マークが誕生して間もない06年6月、通学中にマークを見かけるようになったという女子高生は、多くの妊婦が席を譲ってもらっていないことを記事で知ったという。「譲ってくれる人のほとんどは、同じ体験を味わってきた女性の方々。なぜ男性は席を譲ろうとしないのでしょうか」と投げかけた。

 妊娠中のある女性は百貨店のエスカレーターで後ろの中年男性に「何をだらだら歩いてんのや。邪魔やろ」と言われ、傷ついた体験談を07年7月に寄せた。「妊婦をいたわれとは言いませんが、小さな命をおなかで大切に育てているのです。少しは思いやりがあってもいいんじゃないでしょうか?」。この後、女性を擁護する投稿が複数掲載された。

 妊娠中にバス通勤だった会社員の女性によると、マークを付けていたのに日本人は席を譲ってくれなかったが、外国人観光客は積極的に替わってくれたという。「うれしいというより悲しくて涙が出ました」(13年10月)

 別の女性も「マークを付けていようが、おなかが大きくなろうが、席を譲ってもらったことは一度もありませんでした」(17年4月)。だが、出産後に赤ちゃん連れで外出した際には、「妊娠中には悲しい思いをしましたが、今では電車に乗ると、若い人から年配の人まで、誰かが私たち親子のために座席を譲ってくれます」(17年11月)と喜びを報告している。

 一方、席を譲れるよう気を付けているという男性(62)は、かばんに付いているマークが見えないことがあり、「おなかをじろじろと見るのも失礼だ」と困惑する。実際、席を替わった後で妊婦ではないことが分かり、互いに気まずい思いをしたことも。「疑わしきは、素知らぬ顔で席を立つ」方針に変更したというが、「もっとはっきり分かるように何か工夫はできないものか」(20年2月)と訴える。

 最近の投書は昨年12月で、混み合う電車に乗り込んだ女性に席を譲る男性を目撃した専門学校生から。不思議に思ったが、マタニティーマークが付いているのを見た瞬間、幸せな気持ちになったという。「お年寄りや妊婦に席を譲るのは当たり前のことかもしれません。しかし、実際にはできていないのでは。相手のことを考えて私たち一人一人が行動できたなら、今以上に優しい社会になると思います」と締めくくっている。

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