専門家に望むのは「分からないことは、分からない」と言う誠実さ 第6波との向き合い方<前編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

根拠や効果に疑問の大きい規制は、国民に不信感をもたらす

「これまでの個々の対策の効果を検証するべき」という声がありますが、実際の複雑な社会において行われた新興感染症の多くの対策のうち、どれがどの程度、実際に寄与したのか(あるいは寄与しなかったのか)に正確な答を出すのは、実は極めて難しい問題です。非常に単純化して申し上げれば、その他の条件をすべてほぼ同じにした二つの社会において、当該対策を行った社会Aと行わなかった社会Bを、比較検証しなければ、正確な答は出せないので、それは、一定の統計的処理を行うことを前提としても、容易なことではありません。

また、対策の効果という意味では、例えば「飲食店の営業や酒類提供を数時間短縮すること」の感染抑制の効果や、「会食5人は×だが、4人は〇」というルールの有用性等については、率直に言って、大きな疑問があります。

それに、感染の波というのは、基本「増えたら必ず減る」ものなので、その意味でも、例えば「第5波の急減は人流抑制の成果」とする説については、「時期が重なっただけとも言えるし、明確なエビデンスは無いよね・・。対策は違えど、どこの国も増えたら減ってるよね。」という指摘自体は当たっています。

「科学」が人々の疑問や信頼に応えようとすることはとても重要ですが、特に新興感染症を巡っては、すべてのことに明確な一つの解が存在するわけではなく、どんなに優れた“専門家”であってもその時に「その時点での最適解」が分かるわけでもない、という現実の認識と、そして「分からないことは、分からないときちんと言える」ことが、真の専門家の誠実さというものだと、私は思っています。

後編に続きます。

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