専門家に望むのは「分からないことは、分からない」と言う誠実さ 第6波との向き合い方<前編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

オミクロン株による感染が急増し、まん延防止措置が34都道府県に適用され、緊急事態宣言の発出も議論になっていますが、わたくしは、これまでとの状況の違いなども踏まえれば、過剰となる規制は避けるべきだと思いますし、過度に不安を煽ることも、また一方で、リスクを過小評価することも、ともに妥当ではないと思います。

コロナ渦が始まってすでに2年、大切なのは、必要以上におそれも軽視もせず、世界の状況も含め、現状をできるだけ“正確に”認識し、そして、「リスクはゼロにはならない」という現実を受け入れること、高齢者や基礎疾患のある方などは重症化することもあり気を付けていただくとともに、過剰な規制により社会全体に生じるマイナスが大きいことも踏まえ、できるだけ日常をきちんと回すようにする、という覚悟を持つことだと思います。

オミクロン株による感染の急拡大に直面しているのは、世界各国同じです。そうした国々が、どのように対応してきているか、そして、それはどういう根拠や国民理解に基づくものであるか、といったことも参考にしながら、考えてみたいと思います。

目次
#1 世界と日本の最新の感染動向から見えてくること
#2 この段階に至っては、「どこまでのリスクを許容できるか」を考えるべき
#3 根拠や効果に疑問の大きい規制は、国民に不信感をもたらす
#4 海外での規制撤廃・緩和の状況と日本―その背景にあるもの
#5 医療はどうあるべきか
#6 コロナ渦は、露呈した様々な非効率を変革していく機会

なお、わたくしは、医療現場や政策担当者、一般の方々等、広くお話をうかがうようにしていることはもちろんですが、加えて私的なことになりますが、親類に新型コロナで亡くなった者や、コロナの治療に当たっている医療関係者等もおり、亡くなった方の無念もご家族の悲しみも、医療従事者の大変さ等も、分かっているつもりでおります。それでもなお、現下の状況において、「一国の新興感染症対策とは、どうあるべきか」を考える際には、「国民生活・社会経済の維持と感染拡大防止策は、車の両輪であり、バランスを取る努力をすることが大切」と、改めて強く思う次第です。

世界と日本の最新の感染動向から見えてくること

2022年1月31日時点で、日本は、新規感染者74136人(7日間平均)、重症者783人、死者48人。なお、これまでの最多は、新規感染者25992人(2021年8月20日)、重症者2223人(同9月4日)、死者216人(同5月18日)です。

現在の世界各国の状況と比べてみると、下記のとおり、1月30日時点(7日間平均)の新規感染者数は、OECD加盟国38か国中、日本の新規感染者数(7日間平均)は、少ない方から5番目、死者数(同)は2番目で、それぞれ上位国の10分の1、30分の1ほどとなっています。

 上2つのグラフからは、OECD加盟国の中で、日本の感染者・死者数は、相対的にかなり少ないこと、そして、下3つのグラフからは、世界でも日本でも、現在オミクロン株によって感染者が史上最多を記録している中でも、死者数については、これまでと比較すると、少なくなっているということが、分かります。

もちろん、亡くなられた方やご家族にとっては、それはあまりにも甚大な被害・悲しみであり、相対的に以前より減っているからよい、というような話では全くないわけですが、あくまでも、「全体として、これまでと比較して見ると」ということになります。

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