神社仏閣でもIT化の波が!? お賽銭のキャッシュレス化について、お寺側はどう考える?

塩屋 薫 塩屋 薫

SNSでの発信はもはや当たり前、YouTube・生配信、スマホを使った非接触のおみくじなど、寺社でもさまざまなIT化が見られる昨今。ただし、キャッシュレス化が進むなか、今も「現金」のイメージが強いお賽銭。はたして、お賽銭としてのキャッシュレス事情とは? 寺院ITアドバイザーの小路竜嗣さんに話を聞いてみました。

長野県塩尻市にある創建400年以上の古刹「浄土宗善立寺」の副住職である小路さん。信州大学大学院・工学研究科修了後に、デジタル機器メーカー「リコー」でエンジニアとして働いていた経歴などをいかし、2021年6月に寺院ITアドバイザーとして開業しています。

お賽銭のキャッシュレス化はどうなる?

――お正月にお賽銭のQRコードについてツイートされていましたが、そのきっかけは?

金融機関での硬貨入金手数料のため(1円・5円・10円玉は神社の負担が大きくなってしまう)、賽銭のお願いを貼り出した神社さんの話題をツイッターで見かけ、それにインフルエンサーの方がQRコード決済を提案されていたんです。

また「賽銭 PayPay」で検索してみると、「PayPay」で賽銭を集める寺社が多く存在していることを知り、注意喚起のためにツイートしました。

QRコードを放置すると悪意のある誰かが自分のQRコードを上貼りするなどの詐欺被害もあるためです。(※2日のツイート後に改めて「PayPay」に問い合わせると、2022年1月現在「PayPay」QRコードでのお賽銭などの寄付行為は禁止されているとのこと)

――寺社により「J-Coin Pay」でのQRコードお賽銭なども導入されていますが、今後のキャッシュレス化についてどう思われますか?

これまでにも「QRコードお賽銭ができる・できない」の話題はありました。これはキャッシュレス化に伴い、1円などの硬貨の生産そのものが少なくなっており、「手元に小銭がない。小銭をもたない」人が増えたためです。

さらに今年は大きな動きがあり、2022年1月17日からゆうちょ銀行で硬貨入金に多額の手数料が必要になります。少額が多いお賽銭では手数料でマイナスになる可能性が高くなり、お賽銭で護持や修繕をおこなっている寺社にとっては死活問題です。

――まだ色々と課題があるとお考えですか?

日本の法律、企業の規約に加えて、事業者へのユーザデータ提供は信教の自由に反していないか、プライバシーの問題といった宗教上の倫理、お守りなどの授与品は寄付に対する授与なのか売買契約なのかという税制度の解釈など、多くの課題を越えなければならない、と個人的には考えていますね。

――では、善立寺ではQRコードお賽銭についてのお考えは?

これまで述べた通りの課題があるので、現段階では考えておりません。もし全ての課題が解決されるのであれば、少額硬貨の流通量減少、キャッシュレス決済の増加、銀行硬貨入金の有料化で困っている寺社の助けになると思います。

また、ネットのコメントによっては、QRコード等の電子決済を導入しないのは「現金をピンはねしたいから」といった声も出ていますが、そのような理由では決してないことを知っていただけたら。

今後はお寺もIT化がどんどん進む?

――ちなみに、寺院ITアドバイザーとして開業したのは?

お寺とは全く別の内容になってしまうこと、また、クライアントとの契約や秘密保持契約などを柔軟に締結できるため、開業しました。「浄土宗善立寺」副住職としてではなく、寺院ITアドバイザーとなったことで、他宗派や他宗教の方からも気軽に相談をいただけるようになりました。

――善立寺で取り入れているIT化はありますか?

WEBサイトを自作し、法要の申込みや登録情報の変更などをWEBやLINEからできるようにしています。また、バックヤード業務のIT化を進め、書類の電子化なども行っています。

――これまでどのようなご相談が寄せられていますか?

コロナ禍以降、オンライン会議や法要についての相談やWEBサイトの制作方法、SNSの使い方などの相談が寄せられました。これまで実際にお寺に集まっていただくことが主だったので、それ以外でどのようにお檀家さんとコミュニケーションを取るのかといった切実な問題が多かったです。

――お寺ならではの一般企業と異なる点や、今後の展望は?

お寺には社員IT研修などがないため、ITやパソコンの活用に不得意な方も多いです。パソコンの選び方から、信頼できる業者の選び方、基本的なITの仕組みやITリテラシーについてお話ししております。

お寺に入って、観光寺院以外にも街なかには素敵なお寺と素敵な活動を日々行っているお坊さんがたくさんいることを知りました。IT活用で困っている、そんなお寺さんをサポートし、未来に残すお手伝いをしていきたいです。

◇  ◇ 

どのように寺社のIT化が進んでいくのか、今後の進化に小路さんも一役担ってくれそうですね。

■「浄土宗善立寺」公式サイト https://zenryuji-jodo.com/

■寺院ITアドバイザー・小路竜嗣さんTwitter https://twitter.com/KOJIRYUJI1

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース