お酒好きの友人から、「自家製の梅酒は造り方によっては違法になる場合があるらしい」という噂を聞きました。梅酒を造っただけで法律違反になったら、たまったものではありません。実際にはどうなのか、「かなえ法律事務所」(神戸市中央区)の森本圭典弁護士に聞いてみました。
「まず、法律上の『お酒』の定義についてですが、酒税法という法律があり、アルコール度数1パーセント以上のものを『お酒』と定めています。そして、お酒を造るには製造免許が必要になります。製造免許がない状態でお酒を造ると、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます」(森本弁護士)
これだけ聞けば、自家製の梅酒を作るのはダメではないかと思いますが……「アルコール度数20度以上のお酒に、梅を入れて梅酒にすることは例外的に認められています。これについては、国税庁のホームページにも書かれていますよ」とのこと。森本弁護士に言われた通り、国税庁のホームページを見ると、以下のように載っていました。
自家製の梅酒を作ることは例外的に認められている
「消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものに限ります)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。(1)米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ、(2)ぶどう(やまぶどうを含みます。)、(3)アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす」
確かに、これを見る限りでは、アルコール度数20度以上のお酒で梅酒を造ることは許されています。とはいえなぜアルコール分20度以上のものと決められているのか。これに関しても森本弁護士が解説します。
「アルコールは酵母の働きによって作ることができるのですが、アルコール度数が20度以上になると、酵母が死滅してしまうんですね。酵母が死滅すると新たにアルコールが作られることはないので、『お酒』は造っていないとして、例外的に認められているようです」
お店で飲む直前に作られたカクテルは違法ではないが、作り置きはNG?
さらに森本弁護士は、「酒税法43条では、『お酒に水以外のものを混ぜたものがお酒であるときは、お酒を製造したものとみなす』という規定があります」とコメント。例えばバーなどで飲むカクテルは、お酒に水以外のものを混ぜてお酒を造っていますが、これは違法にならないのでしょうか?
「バーや居酒屋の店主がお酒の製造免許を保有しているかというと、まず保有していないと思います。酒税法43条10項には、『前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない』と定めてあります。言い換えると、飲む直前にお酒にお酒を混ぜて飲むことは例外的に許されるということです。作り置きはダメということになりますが、お店で飲む直前に作られたカクテルはもちろん違法ではないので安心して飲んでください」
今回調べてみて、「家庭でお酒を造ってはいけないが、アルコール20度以上のお酒で梅酒を造ることは許される」「お店で飲むカクテルは直前に作られたものであれば違法ではない」ということがわかりました。最後に森本弁護士は「お酒は販売するのにも免許がいるので、ご家庭で法律の許す範囲で作った梅酒であっても販売することは許されませんのでご注意ください」と念を押していました。これからの年末年始、お酒の飲み過ぎには気を付けたいですね。
(まいどなニュース/ラジオ関西・バンク北川)