アニメ「ちびまる子ちゃん」で知られる漫画家の故さくらももこさんが作詞した静岡市PRソング「まるちゃんの静岡音頭」を巡って、市は対応に追われている。一度は「まる子」役の声優TARAKOさんを新たな歌唱者に迎え、お披露目したものの、直後に暗転。音頭を編曲したのが、いじめ告白記事で東京五輪開会式の音楽担当を辞任した小山田圭吾さんだったことから現在は楽曲のPR活動を停止している。やれやれ、再開はいつになることやら。
国民的人気アニメ「ちびまる子ちゃん」の作者、さくらももこさんが亡くなって8月15日で3年になる。さくらさんは、このもどかしい状況をどのような思いで眺めているのだろうか。
流れはこうだ。7月19日、静岡市は地元出身のさくらももこさんが作詞した楽曲「まるちゃんの静岡音頭」をリニューアルしたと発表。何より主人公の「まる子」役を演じるTARAKOさんが歌うこととなり、新バージョンに対する期待も大きかった。
というのも初代の歌唱者は静岡市出身のあのピエール瀧さん。不祥事により2019年3月から公式使用を中断していたという背景があり、2年4カ月ぶり心機一転の再出発だったというわけだ。
新音頭は市のシティプロモーションWebサイトでも公開を開始。市役所庁舎内やイベントなどでも流し、市の魅力発信に活用しようと意気込んでいた。また楽曲のリニューアルに合わせ、静岡鉄道では来年3月31日までの予定で「まるちゃんの静岡音頭」仕様のラッピング電車の運行を始めた。
そもそも「まるちゃんの静岡音頭」は、さくらさんがふるさとのために何かできないかとの思いから2013年に完成した楽曲で、地元の地名や名物を歌詞に盛り込んでいる。自身が声を掛け、作曲は細野晴臣さん、振り付けはパパイヤ鈴木さんが担当。踊りやすいと評判で地元の小学校や地域のお祭りなどで親しまれていた。
ところが、実は新バージョンのお披露目のときには雲行きが怪しくなっていた。この音頭の編曲を担当していたのが東京五輪・パラリンピック開会式の音楽担当者の1人だったミュージシャンの小山田圭吾さん。過去のいじめ告白記事がネットで炎上し、19日に辞任していた。市には音頭の使用や公開に対し、市民からの苦情が届いていたことからお披露目から2日後の21日に使用停止を余儀なくされた。
市の広報担当者は「市民の方からは”とても残念。曲には罪はないのに”という声が届く一方で否定的な意見もありました。曲は市民に受け入れられ、愛されなければ意味がありません。市民の声を真摯に受け止め、PR活動を停止することにしました」と話す。これにより、公式ホームページでの動画も削除。ラッピング電車も運行のみで車内で楽曲は流されていない。
気になる今後については、現在は模索中だ。市の担当者は「音頭にはさくらさんの故郷への思いが詰まっている。ただ、さくらさんが亡くなっているので、今後どうしようか、どうするのがベストなのか確認できないのが悩ましいところです。思いをくんで、さくらプロダクションの方、関係者の方とも相談しながら進めて行きたい」と話す。
市によると、19日のラッピング電車の出発式では田辺信宏市長が「より一層まるちゃん音頭らしい曲になりました。さらに多くの人に知ってもらい、好きになってもらいたい」とあいさつ。秋にはコロナ禍を考慮しつつも踊りのコンテストをオンラインで実施するプランもあったという。
「いまは、まん延防止法も出ていて夏祭りなどのイベントはできませんが、事態が落ち着いて、市民のみなさんから受け入れられるとなったときには市としてPR活動を再開したいと考えています。時期などは未定。そのときは編曲をどうするのかを含め、対応していきたい」
ピエール瀧さん、小山田圭吾さんの一件で2度もピンチに見舞われてしまった「まるちゃんの静岡音頭」の運命やいかに…。アニメ「ちびまる子ちゃん」の中で、まる子を借りて”含蓄”のある言葉をポロッと聞かせてくれたさくらさんなら、この状況をどんなセリフでまとめてくれるのだろう。