子供にどう教える?「鬼滅の刃」で注目集まる遊郭 大阪・飛田新地で妓楼建築の親子見学会 

黒川 裕生 黒川 裕生

遊郭の面影を今に伝える妓楼建築として、国の登録有形文化財に指定されている大阪・飛田新地の料亭「鯛よし百番」で1日、地域の小学生と保護者を対象にした見学会があった。関係者によると、実際に遊所として使用され、現在は予約客しか入れない同料亭で、このような催しが行われるのは初めて。参加した親子連れ約30人は、桃山文化をテーマにしたという独特かつ絢爛豪華な内装に見入り、地域の歴史に思いを巡らせた。

鯛よし百番は、大正末期から昭和初期にかけて建てられた近代和風建築。戦後、売春防止法の施行などに伴い、当時のオーナーが収集した美術品を展示する観光施設・料理店へと業態転換。10年以上かけて改装したという時代を超越した内部の豪勢な意匠は、今なお強烈な存在感を放つ。

親子見学会を企画したのは、老朽化した鯛よし百番を修復するクラウドファンディング(CF)に取り組む「サミット不動産」社長の杉浦正彦さんと、飛田新地が校区に含まれる大阪市立金塚小学校のPTA会長桑原大さん。空襲による焼失を免れた貴重な文化財に親しみながら、地元住民にとっては「近いようで遠い」という飛田新地の歴史の一端に触れる機会にしてもらおうと準備を進めてきた。

建物の中に足を踏み入れた児童と保護者らは、日光東照宮の陽明門を模した待合室や、住吉大社の反橋を模した中庭の橋に息をのみ、各部屋の壁や天井に描かれた豪勢な絵に目を丸くしながらじっくり見学。「2階なのに井戸がある」「すごい」と子供たちからは何度も感嘆の声が漏れ、興味深そうにスマホで撮影する保護者もいた。

見学後、保護者は杉浦さんのセミナーを受講。日本における遊郭の歴史を概観し、飛田新地(飛田遊郭)の成り立ちをあらためて振り返った。鯛よし百番の建物としての歴史的・文化的価値を称揚するだけではなく、性風俗が抱えるジェンダーの非対称性や人権的な問題にも言及。折しも人気アニメ「鬼滅の刃」が今年、大正期の遊郭を舞台にした新シリーズを放送する予定になっており、杉浦さんは「遊郭の意味を子供にどう伝えるかは難しいかもしれない。皆さんの判断にお任せしますが、協力できることがあればいつでも相談してほしい」と呼び掛けた。

参加した2年の女児は「天女が描かれた壁や、花の絵がたくさんある天井がきれいだった。建物のクイズも楽しかった」。両親は「飛田新地は保育所の送迎でよく通り抜けていたが、あの綺麗なお姉さんたちがどういう人で、ここがどういう場所なのかを、いつか子供に説明する必要があると思っていた」といい、見学会の企画を知って「いい機会だ」と申し込んだ。「非日常的な建物の雰囲気が面白かった。普段は敢えて話題にすることのない飛田新地のことを、少し身近に感じることができた」と喜んでいた。

「鯛よし百番」を修復し、後世に残すためのCFは8月10日まで実施中。

【CFサイト】https://readyfor.jp/projects/micro-heritage-hyakuban

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