ワクチン証明書の提示義務が拡大…コロナ禍で収入源を絶たれた米国アーティストたちの声

今井 悠乃 今井 悠乃

 米ロサンゼルスでは、バーやナイトクラブ、コンサート会場へ入場する際に新型コロナウイルスのワクチン接種証明書の提示を求めるケースが増えています。一時よりは収まっているとはいえ、その背景にあるのは依然として残るコロナ禍の大ダメージ。それと、家族や友人への健康を懸念して不特定多数が集まるショーや舞台をキャンセルするアーティストが後を絶たないからです。今後もワクチン証明書の提示を求める会場は増えていくことでしょう。

 一方、パンデミック中に活動が制限されてしまった多くのアーティストは、バーチャル・コンサートを開催したり、SNSのライブ配信でファンと交流するなど様々な工夫を凝らして来ました。しかし、国際的に名が知られるアーティストだろうと小さいナイトクラブを回るローカルバンドだろうと、彼らにとってライブツアーは貴重な収入源でもあります。

 ようやく、ライブ再開の動きが出たことは喜ばしい限りですが、全面再開とまではなかなか進みません。そんな中、ずっと気になっていたことがあります。その収入源を失ってしまったアーティストたちはどのような音楽活動をし、またコロナによって、どのような影響を受けたのでしょうか。その2点です。

 そこで今回、ロサンゼルスを拠点に活動し、いま私が最も注目しているシンセポップデュオ「THEY KISS(ゼイ・キス)」のアナ・マコブチクさんとフランチェスコ・チベッタさんと連絡が取れ、話を伺うことができました。

 その前に日本ではまだそれほど知られていないのでゼイ・キスを紹介させてください。ゼイ・キスは女性ボーカルのアナさんとベテランDJでもあるフランチェスコ(愛称キャッシュ)さんという組み合わせ。2020年11月にリリースした「I Gave it All」はメランコリックで官能的、それでいてグルーヴィーなメロディーに心を揺さぶられました。

――キャッシュさん、初めまして。長引くパンデミックの影響で通常のようにスタジオで作曲やレコーディングができませんよね。どんな課題、問題点がありましたか?

「最も頭を悩まされたのは生産性です。家にこもってばかりだと、外部からのインスピレーションが得られず、新しい曲を書くのに苦戦しました。ロンドン在住のプロデューサーや他のミュージシャンとリモートでコラボするのも、いつもと勝手が違うので慣れるまで少し時間がかかりましたね」

――私はロックダウンでライフスタイルが変わり、もしかすると作曲に集中できたのではと思っていましたが、やはり逆だったんですね。コロナ禍から約1年半、これまでどのような音楽活動をされてきましたか?

「正直、パンデミックと大統領選挙が重なり、新曲をリリースするのには向いていない年でしたが、マーケティングに力を入れて、とにかく曲を書き続けました。その中から特に押したい曲のミュージックビデオを撮影したり、ビデオ電話で地元メディアの取材を受けたりもしました。その一方で、またホームスタジオを活用して短期間で映画「The Gateway(ミシェル・チヴェッタ監督、オリヴィア・マンとフランク・グリロ主演)の曲を5曲、仕上げることもできました」

——先ほど、生産性が…とおっしゃっていたのに凄いじゃないですか。今後の活動方針を教えてください。

「9月にその映画が上映されます。そこで波に乗って、今年中にまた新曲をリリースする予定です。今後はテレビのCMなどでも使えるような多様性に満ちた曲を手掛けていきたいと思います。応援してください」

   ◇   ◇

 私が取材に訪れた日もキャッシュさんは、ソロアーティストとしても活動をするアナさんをサポート。新曲をプロデューサーと一緒にホームスタジオで録音されていました。しばらくは、このままワクチン証明書が必要な状況は続くことでしょう。できるだけ早く、アーティストとファンが安心して空間を共有できる日が来てほしいですね。

▽アナさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/annamakovchik/

▽THEY KISSのインスタグラム
https://www.instagram.com/they.kiss/

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