流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの視点」から発信する「最新流通論」の今回は「昭和ポップス」がテーマ。サブスクリプションで時代を超えて音楽聴き放題のサービスが普及したことで、1970~80年代頃のアイドル歌謡やニューミュージック等が現在の若者に新鮮さと共に発見されているという。海外では山下達郎らの作品が「シティ・ポップ」と称されて注目され、DJがプレイするなどといった現象が起きている。その人気の要因を分析した。
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歌を聞くとその流行っていた時代を思い出します。将来、昭和ポップスを聞くと学生時代もさることながら、コロナ禍の仕事に行く時の電車の中が情景として浮かんできそうです。
なぜなら、音楽聴き放題のサブスクリプションのプレイリストで「ザ・ベストテン」の頃を聴きまくっていたからです。
たのきんトリオや山口百恵、松田聖子、中森明菜のアイドルから堀江淳、村下孝蔵などなど…。昔、カセットテープやMDに一生懸命にCDをダビングしていた努力は何だったのかと虚しくなるほど、サブスクリプションではどんな曲でも検索したら簡単に聞けてしまいます。
1960年から65年にかけてテレビが一挙に普及し、70年代からのテレビ全盛時代では昭和ポップスの国民歌が何曲も生まれています。まさに当時聴いていた40歳以上の人口が全体6割強以上を占めているため、昔のヒット曲を振り返る番組が特番で組まれ、ドラマの主題歌やBGMなどの昭和ポップスが頻繁に流れています。
そんな環境で若者の間でも昭和ポップスブームが起こっているのも、サブスクリプションで気軽に聴けるというのも大きそうです。若者にはグループ全盛のアイドルが一般的な今と比較して、ピンの歌手がその個性を前面に押し出して歌う姿に逆に真新しさも感じているようです。
また、物語性のある歌詞にも共感していて、特に恋愛は、LINEやアプリを使ったデジタル恋愛が主流となり、家の電話に連絡してデートの約束をするなどのハードルの高く、不自由な恋愛をベースにした純愛系が心に響くようで、あまり今にないエロ系歌詞なども人気のようです。
海外でも、昭和の歌が「シティ・ポップ」として人気を博しています。僕がコンサートにも行く杏里や竹内まりや、山下達郎、角松敏生などの都会的に洗練された歌を、韓国人のNight Tempoがリミックスし、YouTubeなどにアップして欧米やアジアの若い世代を中心に世界的に聴かれているようです。
コロナ禍では、カラオケに行くのはハードルが高いが、収まったら、約束している仕事の若者メンバーと一緒に歌うのが楽しみです。ちなみに、私の十八番(おはこ)は、上田正樹の「悲しい色やね」です。