関西大学は、対面授業が再開された6月21日から、学生・教職員ら約3万5000人を対象にした新型コロナウイルスワクチンの職域接種を始めている。大阪府吹田市の同大学千里山キャンパス内に特設会場を設け、希望する学生など1日900人に米モデルナ製ワクチンを接種できる態勢を整えている。
7月23日時点で、全国158大学で職域接種を実施。ワクチンの供給延期で各大学、企業などの職域接種開始も延期される中、関西大学は連携協定を結ぶ大阪医科薬科大(大阪府高槻市)から医師や看護師の応援を受け、医学部を持たない大学としては異例の速さで接種がスタートした。
基礎疾患保有者や、留学などで接種証明が必要な教職員、学生を優先。既往症があるという大学職員の女性(55)は、開始日に接種し「ワクチン接種は秋くらいかと思っていたので、大学内で接種できるのはとてもありがたい」と話した。
関西大学では、初回接種を終えた学生に千里山キャンパスおひざ元の学生街・関大前通りで利用できるクーポン券を配布している。関大前商店会加盟の飲食店など約50店舗で利用できる550円のクーポン(500円券と50円券)で、大学生の保護者会・教育後援会が500円分を、関大前商店会が50円分を負担している。
学生3万人全員がクーポンを利用すると、約1500万円が学生街に落ちる計算になる。30日、大阪府に4度目の緊急事態宣言が発令されることが決定(8月2日から31日まで)。コロナ禍にあえぐ店にとってはクーポン利用は集客回復に期待が高まる。関大前のバー・レストラン「ICHIRIKI」では、通常600 ~800円台のランチメニューを500円分のクーポンだけで食べられるように設定した。830円(税込)の「やわらかロースのとんかつプレート」は、実質330円引きになる。
オーナーの澤一雅さん(48)は「いっぱい学生が戻ってきて欲しい。この関大前通りは、ワイワイする通りだと思う。にぎやかなのが大学の魅力にも関わる。接種促進に協力します」と採算を度外視。学生がワクチンを接種して、学生街にコロナ禍前のにぎわいが戻ることを期待した。
関西大学広報課によると、約3万人いる関大生のうちワクチン接種を希望する学生は約58%の1万7500人で、そのうち1万7000人がすでに初回接種を終えているという。接種はあくまで任意とし「対象者には行き届いている。希望調査や予約の状況などから対象を広げている」と、学生の保護者や商店会加盟の店舗従業員なども接種対象とした。
職域接種が始まっていない大学もあるが、関西大学が大阪大や近畿大など医学部を持つ大学と接種を同時開始したことを評価する声も大きい。一方で、ワクチン接種を希望しない関西大学経済学部の女子学生は「いまは打ちたくないです。周りがワクチンを接種してどうなるかを見てから打つかどうか決めたい」と訴える。
関大前の店舗で働く60代女性は、クーポン効果を期待するだけに「思ったよりも低い印象。我々の年代なら、すぐにでも接種したいところ。学生はもう少し打って欲しい」と本音を漏らす。ワクチンを打ちたくても打ちたい未接種の人にとってはうらやましい状況だが、大学生の様子見ムードもまだまだ強いようだ。