ビートルズ関連商品の購入者はリアルタイム世代より20代の若者が多い-。そんな話を日本最大のライセンス(使用許諾契約)商談展「ライセンシング・エキスポ ジャパン2018」(4月下旬、東京ビッグサイト)で聞いた。ザ・ビートルズのTシャツやタオル、工芸品といったグッズの展示コーナーがあったのだが、現場のスタッフは「21世紀の逆転現象」を証言した。
商品化を担当する「コスモマーチャンダイズィング」社の大野篤志社長は「リアルタイムで聴いていた人たちよりも若い人が購入しています」と説明。同社の営業担当・間山久子さんは「20歳前後でアナログレコードを聴いている人たちが増えています。ビートルズを初めて聴いた若い人が、アイチューンのダウンロードでは分からないレコードのジャケットにアートとしての魅力を感じているようです」と指摘した。
ビートルズ来日時に取材し、解散後もジョン・レノンらと親交のあった音楽評論家・湯川れい子氏はデイリースポーツに対して、この現象を分析した。
「CDが売れなくなっても、コンサートのチケットは売れている。若い人のライブ人気は高いのです。CDは音を数字で再現しているので奥行きがないのに対し、アナログレコードには音の奥行きと臨場感があるため、ライブの臨場感がアナログに求められている」
さらに、湯川氏は「60年代後半のサイケデリック・ムーブメントを受けたイラストも今に影響を与えている」とデザインにも言及。「ローリングストーン誌が選んだ歴史上の名盤では『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が不動の1位」(湯川氏)という67年の金字塔的アルバムは、ジャケットを立体的に組み立てるペーパークラフト「立版古(たてばんこ)」として会場に展示されていた。
一方で、リアルタイム世代の思いが孫世代にも受け継がれている。間山さんは「第1世代である70代のおじいさんが中学生くらいのお孫さんにビートルズのグッズを買われていました」と明かす。
66年の日本武道館公演で前座を務めたザ・ドリフターズの仲本工事は「野球場でホームランを打つと『ワ~ッ』と歓声が起きるじゃないですか。ビートルズが偉大なのは、その歓声が1時間ずっと続いたこと。演奏は全く聞こえない。そんな現象はいまだかつてないですよ」と振り返る。
湯川氏は「EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)で洋楽に興味を持った若い人でも、音楽の歴史をたどれば必ずビートルズに行き着く。日本でも桑田佳祐さんら影響を受けなかった人はいない。実験を重ねて練り上げた楽曲は今聴いても古さを感じない。20世紀の最も優れた作曲家であるポール・マッカートニーが今も現役で来日公演していることで若い人にも知られる」と総括。70年の解散後も半世紀近く若者に支持される最大の理由は言うまでもなく音楽性にある。