「感染者は増えても、重症者が増えていないから問題はない」というのは本当か?
7月28日の東京都の発表では、感染が確認されたのは3177人で、年代別で見ると、20代が最も多い1078人、次いで30代が680人で、40代以下が82.8%を占めていて、65歳以上の高齢者は95人でした(7月27日時点)。
入院者は2864 人で、そのうち軽症・中等症2782 人、重症82 人(※)、宿泊療養1827 人、自宅療養6277 人、入院・療養等調整中3404 人、そして亡くなられた方は6人となっています。確保病床数に占める入院患者の割合は48.0%、重症者病床数に占める重症者の割合は20.9%(国の基準だと、58.2%(7月26日時点))です。
(※)以前から問題にされていますが、国と都の「重症者」の定義が異なっており、国は、集中治療室(ICU)に入っている方ですが、都はその中で人工呼吸器とECMOを装着している方に限っています。私はこれは統一すべきと考えます。定義の異なるものを比較しても、本来、意味をなさないからです。
なお、これまでの東京都の一日の最多新規感染者は2520人(2021年1月7日)、重症者は160人(1月20日)、死者は32人(2月3日)です。
全国では、新規感染者9576人、重症者522人、死者8人となっています(7月27日時点)。
確かにピーク時と比較すると、新規感染者数に比して、重症者・死者の状況は押さえられており、重症化しやすい高齢者のワクチン接種が進展していることの効果が出ているといえます。
ただ、感染者が大幅に増えていけば、当然重症者も増えていきますし、実際の入院患者数だけでなく、例えば、東京都の「入院・療養等調整中3404名」の中に、入院が必要な方・今後重症化する可能性のある方がどれくらいいらっしゃるのか、といったことも気になります。
基本的には、早期に必要な治療を行うことで重症化を防ぐことができるのであり、この春の大阪のように、入院先が決まらず治療が遅れることで重症化が進み、自宅や宿泊療養施設で亡くなる方が続いてしまったことは、非常に残念なこととして、記憶に新しいところです。
東京都が7月27日に開催した、新型コロナの患者を受け入れている都内の医療機関(およそ170)向けの説明会では、都からさらなる病床の確保が要請され、そのために、救急医療の縮小・停止、予定している手術の延期、一部診療科の停止など、通常医療の制限を検討して、病床の転用・確保が求められました。都は「現在、確保している病床」の5967床を、8月6日をめどに「最大で確保できる」としている6406床まで増やしたいとしています。
しかし、通常医療の制限が必要ということは、すでに医療に影響が出ているということです。例えば、がんの検診や受診数等も大きく減っており、手遅れとなってしまうことが危惧されます。
医療機関の方々にも話を聞きますが、「新型コロナの重症者は少なく、医療逼迫はしてないから、このままで大丈夫!」という状況ではないだろうと思います。
人口当たり病床数が世界一の日本で、新型コロナ病床が不足することの原因や解決方法は、これまで繰り返し申し上げてきたところなので、今回は述べませんが、感染症対策の最重要事のひとつは、死者を出さないということですので、1年7か月経ってなお、我が国で病床不足が懸念されるのは、本当に残念なことです。
当初感染者・死者が非常に多かった米国や英国では、既存病床の活用のほか、コロナ専用の病棟・病院を大規模に新設するなどして、大幅に病床を増やしました。このまま感染拡大が続くのであれば、そうした抜本的な方策を、日本も考える必要が出てくるのではないでしょうか。
また、若い方でも、味覚嗅覚障害や倦怠感などの深刻な後遺症が、長期にわたって残る可能性等も踏まえると、各々の方が、可能な範囲で、感染防止策を講じていくことは、引き続き、とても重要だと思います。
ただし、政府としてこれまでと同じやり方を繰り返すことでよいのか(効果があるのか、適切といえるのか)といった点については、多少の発想の転換が必要かもしれない、と思うようになりました。