緊急事態宣言延長の影響を考える オリパラ「どうしてもやる」ならすべての人々を守って!

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

五輪はどうなる?

国内外で反対の声は高まるばかりですが、開幕まで2か月を切り、どなたに聞いても、関係者は「なにがなんでもやる」ということになっていますね・・・。

感染拡大や医療への負荷など、五輪開催への私の懸念につきましては、これまで繰り返し述べてきており、また、国内外の報道は広く取り上げられていると思いますので、今回は、一つの学術論文をご紹介したいと思います。なぜなら、コロナ渦での「安全安心な大会の開催」は、科学・エビデンスに基づいてしか、本当には実現できない、と考えるからです。

5月25日、米「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」が、東京五輪開催に向け、参加者と日本国民を守ることを企図した新型コロナウイルス対策に問題があるとする論文を掲載したことに、私は少々驚きました。なぜなら、米国の医学研究の中心地であるマサチューセッツ医学会が発行するNEJMは、数多ある医学雑誌の中で、最も権威が高いとされ、世界中で広く読まれ・引用されているものであり、そして、あまり一方に偏った、あるいは政治的な内容のものを掲載することが少ない印象があるからです。

バイデン大統領のアドバイザーも務めるミネソタ大感染症研究政策センターのオスターホルム所長ら4人が執筆し、感染予防策をまとめたIOCの「プレーブック」について、「科学的に厳格なリスク評価に基づいて作成されていない」としました。

具体的には、

(ⅰ)参加する選手全員が、ワクチンを接種して行くわけではない(副反応への懸念や、17歳以下の選手はほとんどの国で接種できない)
(ⅱ)一部のパラリンピック選手はハイリスク者である
(ⅲ)トレーナー、ボランティア、スタッフ、交通やホテルスタッフ、といった多くの人たちを適切に守ることになっていない
(ⅳ)屋外・屋内、接触・非接触型など、競技の特性ごとに異なるリスクを考慮していない
(ⅴ)競技場以外のバス、食堂、ホテル等もリスクが高い

といったことが指摘されています。

そして、この論考は、日本の収まらない感染状況や低いワクチン接種率にも触れ、「五輪は中止することが最も安全な選択肢かもしれない」と述べた上で、「五輪を前に進めるためには、早急な行動が求められる」としています。 WHOが東京五輪のために緊急委員会を開催してアドバイスを行うことも推奨しています(※WHO緊急委員会は、2016年のジカ熱流行に際して、リオ五輪に指針を提供した)。

感染拡大抑制の観点からは、今でも、中止した方がいいと思います。

ただ、「どうしてもやる」ということであるのならば、国内外の声に真摯に柔軟に耳を傾け、参加者や関係者はもちろん、すべての日本と世界の人々を守る形で行っていただきたいと、切に願います。

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