「容器に残ったワクチンを集めて接種」安全性や有効性は? 日本医師会の常任理事に聞く

渡辺 陽 渡辺 陽

新型コロナウイルスのワクチンの高齢者への接種が進むなか、沖縄県石垣市と福岡県田川市で、ワクチン(ファイザー製薬「商品名・コミナティ」)の容器の中に残ったワクチンを集めて接種したと報道されました。ワクチンの供給量が少なく、不安定だった時期に行われたものですが、ひとりでも多くの人に接種したいという思いから行われた善意のワクチンであったとも言えます。「容器に残ったワクチンの安全性や有効性」について、新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーで日本医師会常任理事の釜萢敏(かまやちさとし)さんに話を聞きました。

 容器の中に残ったワクチン、集めて使っても大丈夫?

――容器の中に残ったワクチンを集めて接種することに安全上の問題はないのでしょうか。

釜萢「バイアルというワクチンが入った容器があって、ファイザー製薬のコミナティというワクチンの場合、バイアルのキャップを外して開封します。そこに溶解液の生理食塩水を注入して、針の付いたシリンジを差して5本分もしくは6本分のワクチンを吸い上げます。残ったワクチンにも十分効果があるのですが、バイアル1本分の残量では足りない場合2本分を足し合わせるのです。その操作が適切に行われたら異物の混入などはまずあり得ません。接種は可能です」

――インフルエンザワクチンの場合、容器に残ったワクチンを集めて使うこともある?

釜萢「インフルエンザワクチンの場合、1バイアルに1mlのワクチンが入っています。1人分が0.5mlなので二人分取れます。しかし、少し余りが出ますので、その残液を使って0.5mlにして接種するということは日常の診療の中であります。添付文書には1バイアルから2人分取ると書いてあるので、国がそれを積極的に推奨することはありません」

ワクチンが十分供給されることが大事

――「適切な操作」とは?

釜萢「コミナティの場合、バイアルを開封した後、バイアルに針を刺す回数が多いのです。インフルエンザワクチンの場合は基本的に2回刺せば終わりですが、コミナティは5~6回刺します。無菌的に行われますが、針を刺す回数が多いとバイアルの中に雑菌が入るリスクが高まります。しかし、無菌的に、つまり適切に操作していれば、そのことによって何か問題が生ずることはありません」

――適切な操作で接種したのであれば、善意のワクチンだったということになりませんか。

釜萢「当時はワクチンの供給量が少なく、不安定だったので、ひとりでも多くの人に接種して、ワクチンを有効に使いたいということだったのではないでしょうか。ワクチンが十分に供給されれば、余った液を使う必要はありません。無理に寄せ集めなくても済むだけのワクチンが供給されるということが大事なのです。国の備蓄量も増えてきましたので、もう間もなくそういう状況ではなくなります。6回分引ける注射針とシリンジも供給されます」

――神戸市でワクチン960回分を常温で保管したため廃棄したとか、奈良県五條市では接種済みの注射針を使用するなど、現場の混乱も見られますね。

釜萢「容器の中に残ったワクチンを集めて使用するとなると、非常に手間がかかります。混乱している会場でそのようなことをするというのは、医療従事者にとって大きな負担になります。十分なワクチンが供給されたら、バイアルの中に残った液を集める必要はないのです。現場の問題は徐々になれることで少なくなっていくと思います」

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