感染収束の切り札のひとつであるワクチンについて考えてみた<前編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

「大規模接種会場」の新設

 上記①の方針を実現する一環ということで、東京と大阪で、国直轄の大規模ワクチン接種会場を設置するとのことです。欧米では、野球場、競技場、博物館、大型駐車場等も、接種会場として使われ、ドライブスルー方式等も採用されていますので、大規模接種会場の設置自体は、あり得ることだと思いますが、問題は、人材の活用方法や高齢者にかかる負荷などです。

 まず、1か所で「1日1万人接種」というのは、現実的ではないのでは、と思います。例えば、米ニューヨークの野球場ヤンキースタジアムも1日2000人程度、通常の集団接種会場は、一日数百人程度に接種が行われています。

 何人の確保を予定しているか分かりませんが、接種だけではなく、誘導、受付、問診、瓶から注射器に移す作業、接種後の待機時の管理等、様々な作業への人員確保が必要になります。

 大規模接種会場では、国が直接命令を出すことができる自衛隊の医官や看護官を活用するとのことです。それぞれ1000人ほどの医官・看護官が、全国の自衛隊病院や基地等で従事しているわけですが、①動員が可能であるならば、今現在、関西の「医療逼迫」と言われる地域に送っていただくことは、なぜできないのか(実際に昨年12月には、北海道旭川の病院に自衛隊の看護官10名が送られました。)、②新型コロナワクチンの接種に協力したいという開業医・看護師の方も多くいらっしゃると思いますので、限られた人材の有効な活用という観点からは、この接種会場での自衛隊の医官・看護官の全面活用には、疑問を感じます。

 また、東京大手町の大規模接種会場では、一都三県の高齢者が来ることを想定しているとのことですが、「高齢者にとっては、わざわざ都内に出ていくのはしんどい」「感染がこわいから電車には乗らないようにしている」といった声もあります。それぞれのお住まいの近くで早く接種ができるようにするのが望ましいわけですが、やはり難しいでしょうか…。

 なお、特に変異株は、若年層・壮年層にも感染し、重症化・死亡するケースも増えていますので、高齢者のワクチン接種さえ済めばもう大丈夫、ということではない、ということも、改めて申し上げたいと思います。

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