東日本大震災で家が流され避難生活…認知症やがんにもめげず再起を図る家族の姿を描く【漫画】

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

宮城県亘理郡山元町出身の漫画家、ニコ・ニコルソンさん(@niconicholson)が、2011年の東日本大震災で家族が被災した時の体験を描いたエッセイ漫画『ナガサレール イエタテール』を制作。

同作は、太田出版により2012年2月よりウェブ連載され、2013年3月に単行本が刊行となりました。その後、2020年に新たな描き下ろしを収録した「完全版」も発売されています。

そして、震災から14年経った2025年現在、改めてウェブ上で一部が公開されることになりました。

突然の地震・津波、そして避難生活

2011年3月11日。漫画家として東京で活動されていたニコさんは、仕事の合間に訪れたジムで地震に遭遇しました。

突然の大きな揺れに驚きますが、心配になったのは、海沿いにある故郷の街で暮らす母と祖母のことでした。

「東京でこれほどの揺れなのだから、震源地となった地元は――」

実際、まさにその時、地元で同居する二人は、津波に襲われていました。

家の外壁や窓をぶち破って迫ってくる波に流されながらも何とか2階に逃れ、命は助かりましたが、気がつくと家の周辺は瓦礫だらけの惨状。避難生活を余儀なくされます。

しかも先の津波で携帯電話も水没。しばらくの間、ニコさんと連絡が取れなくなってしまいました。

未曽有の大災害に見舞われてしまったニコさんの母と祖母。その後も、ニコさんの祖母の認知症が進行したり、母が子宮体がんを患ったり、といった苦難も経験しますが、それでも家族一丸となって家を再建するなど、たくましく再起へと向かってゆく姿が、同作では描かれます。

災害の前提にある暮らしを描きたかった

東日本大震災の危機を乗り越えてゆくニコさんやご家族の姿を描いた『ナガサレール イエタテール』。

「元々はブログ日記のように趣味の範囲で公開できれば良いかなと思っていたのですが、知り合いの出版社の編集さんに声をかけていただきました」

同作の連載・出版に至った経緯について、ニコさんはこのように話します。震災という重いテーマを扱っている同作ですが、作中にはコミカルな絵やユーモアのある描写が随所にちりばめられ、気軽に読み進められる印象も受けます。

「そもそも描こうと思ったのは“実家の日常”を伝えたいということでした」

そのような作風にした理由ついて、ニコさんはこのように話します。以前より、身近にいる家族や友人の話を漫画やイラストで表現していたというニコさん。今回の作品も、もともとはその延長として制作されたものだったといいます。

「外側から見れば“被災地”の話とされがちですが、元からそこには人の生活があり、津波に飲まれても日常があり、悲しみだけじゃなく笑いだってある、そういうことを伝えたかったのだと思います」(ニコさん)

瓦礫だらけの場所になる前も、後も、そこには“暮らし”がある――そのように語るニコさん。

実際、作中では家族の安否確認や避難生活、救援物資の調達、家再建のための資金調達、祖母の認知症、母のがん治療――といったさまざまな問題が起こりますが、Twitter(現X)、保険や共済、家族や親戚や友人・地域住民同士の協力など、暮らしの中にあるものに活路を見出している印象があります。

また、漫画では、被災地としてだけではなく、“観光地”として地元・山元町を紹介するページも。

しかし、暮らしのなかの出来事――とはいっても、震災や津波の経験が、大変だったことは想像に難くありません。

作中では、ニコさんの祖母の認知症が徐々に進行していく様子も描かれますが、その原因に震災のショックや避難生活のストレスがあったことは間違いないと、ニコさんは考えています。

「町や家など見える場所だけではなく、見えない心の部分も深く傷つけられていたと思います」(ニコさん)

まずは自分の命を守る

私たちにとって、大きな悲劇になりかねない震災などの災害。

しかし、日本は地震大国ともいわれ、日々各地で地震は起こっていますし、「南海トラフ」など、今後いつどこで大震災が起こってもにおかしくはありません。

そのような、来るべき地震・震災について、どのような備えが必要なのでしょうか?

ニコさんは、東日本大震災の経験もふまえ、このように話します。

「1分後に大地震がきてもおかしくないので防災グッズは揃えました。あとはスマホのバッテリーをまめに充電、予備バッテリーも用意しておく。当たり前ですが、まず自分が無事でないと誰も助けられないので。まずは自分です」

  ◇  ◇

母娘三代による実録自宅再建エッセイマンガ『ナガサレール イエタテール』は、今年3月11日に、ニコさんのX(旧Twitter)にて第1話が公開されたほか、2025年4月現在、太田出版のウェブマガジン「OHTA BOOK STAND」にて4話まで配信されています。

また、同作の全編と描き下ろし漫画を収録した『ナガサレール イエタテール 完全版』はコミック(紙)・電子書籍ともに発売中です。

■ニコ・ニコルソンさんのX(旧Twitter)はこちら
 →https://x.com/niconicholson

■『ナガサレール イエタテール』ウェブ配信はこちら(「OHTA BOOK STAND」の作者紹介ページ)
 →https://ohtabookstand.com/writer/nico-nicholson/

■『ナガサレール イエタテール 完全版』はこちら(Amazonのページ)
 →https://amzn.asia/d/5oX4pP1

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