感染収束の切り札のひとつであるワクチンについて考えてみた<前編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

7月末までに高齢者の接種完了?

 「7月までに3600万人の高齢者の接種を完了する」との政府方針が示されました。ワクチン接種は感染収束に向けた切り札であり、政府に対する様々な批判がある中で、懸命に取り組んでいる姿勢を示したい、ということは理解します。

 しかし、一方的なかけ声ばかりで、「具体的にどうすればそれが可能なのか」が示されないことに、強い違和感を覚えます。実際にワクチンの接種を行うのは、全国の地方自治体です。自治体はこれまでも、住民に対する様々なワクチン接種の主体となってきているわけですが、新型コロナは、急速に世界に感染が拡大した新興感染症で、世界中が対処に苦慮している真最中であり、そして新型コロナワクチンは、人類がこれまで使ったことのないmRNAワクチンで、超低温での保管など厳格なルールがあります。

 こうした状況では、国からワクチンが配布される具体的なスケジュールや量などを、早い段階で示すとともに、各自治体が迅速な接種をできるようにサポートが行われなければ、「手元にワクチンが無い。いつどれくらい国から配布されるのかもわからない。そういう状況で、接種や会場の人の手当ても十分にできていない」状況において、突然「あと3か月で全部終わらせろ」と言われても、自治体は困惑するばかりです。

 もちろん何であれ、「期限を決めて、このときまでにやる!」と決めて取り組むことは、目標を実現するための戦略として有用な場合も多いと思いますし、感染症対策として、迅速にワクチン接種が進められていくことは、望ましいことです。

 ただ、日本はまだ、人口の約2%しか接種が行われていない状況で大切なことは、「必ずいつまでに何人」ということをガチガチに決めて、それに過度にとらわれるよりも、国が為すべきことは、①短期的には、ワクチンを海外から入手して配布し、全国で接種体制を整え、実際に着実に接種が進むように、無理を課さずに、できることを自治体に精一杯やっていただく、そして、②中長期的には、日本がワクチンの開発・製造力を失った歴史的経緯も踏まえ、改めて、今後の方針を考え、改善・実行すること、だと思います。

 なお、国内の医療従事者(約480万人)で2回の接種が完了したのは、まだ約2割(99万5758人、4月29日)です。少なくとも、「ワクチン接種に従事する医療従事者の方が、ワクチンを接種できていない」という状況は、速やかに改善すべきと思います。

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