宣言解除後の新橋、渋谷、上野を歩く…「感染者数が消費のバロメーター」流通アナリストが分析

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渡辺 広明 渡辺 広明
緊急事態宣言解除後も閑散とした東京・新橋の飲み屋街
緊急事態宣言解除後も閑散とした東京・新橋の飲み屋街

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う首都圏への2度目の緊急事態宣言が解除されたが、新規感染者数は宣言中より微増となり、リバウンドへの危機感が現実味を帯びている。この現状において、時短営業を余儀なくされる飲食店の今後の展開、「夜食難民」も生んだ都市生活のあり方はどう変わっていくのだろうか。宣言解除直後に都内でサラリーマンの街と若者の街を回った流通アナリストの渡辺広明氏は当サイトの取材に「感染者数が心の消費のバロメーター」となっている現状を分析。「食の多様化」というコロナ後の世界も予測した。

 まずは、ビジネス街の新橋と若者中心の繁華街・渋谷を比較した。渡辺氏は「新橋は人が少なかった。お客さんが入っている店は以前からはやっていた店か固定客のいる店で、そうではなかった店はお客さんがいなくなり、閑散としていました。その差は大きいと実感しました。テレワークの浸透したビジネス街で飲食店の展開は今後厳しいと思われます。それに対し、若い層の多い繁華街である渋谷は全く違う。コロナ以前より少ないとはいえ、新橋に比べると人出は多い。若い人はコロナに感染しても『重症化しない』という認識もある。こうした若者の多い繁華街はコロナが落ち着けば復活してくると思われます」と分析した。

 宣言解除のタイミングで学生街である高田馬場駅前で飲酒して騒ぐ学生らの姿も報じられたが、渡辺氏は「学生はコロナに関係なく、昔から騒ぐもの。私の息子は大学3年で、学校にはこの1年で1回しか行けておらず、そういう学生が久しぶりに学校に行って友人に会えたら、その盛り上がりが従来の1・2倍くらいになっている可能性はあるかもしれないが、それは特別な現象ではない」と見解を述べた。

 花見スポットがあり、夜の時短に関係なく営業する店が多いことで知られる上野を宣言解除後に歩いた。

 上野公園の「桜通り」は平日の昼下がりでも、ほぼ切れ目なく、かなりの人が歩いていた。シートを敷いて飲食することは禁じられ、コーンで左右に仕切られた桜並木をゆっくり歩きながら花をめでていた。マスク着用を守り、限定されたルール内でも四季を感じる「年中行事」を求める人が根強くいると感じた。

 また、夜10時過ぎに上野の歓楽街を歩くとキャバクラや居酒屋など営業している店は多く、終夜営業店もある。深夜から朝までコースを求める客の流れと呼び込みの声が闇夜に響いていた。

 渡辺氏は「上野の一部エリアは悪い意味で『時短に関係なくお酒が飲める聖地』になっている居酒屋が密集する場所がある」と指摘。さらに「今年の花見スポットではマスクをして整然と歩いている。決まり事を守らない人は1割くらいの範疇に収まっている。夏になれば、家の周りで線香花火をするとか、『我慢の行動変容』に慣れてきたと言えます」と解説。可能な範囲で楽しむ行動を選ぶ形に変わった。

 渡辺氏は「東京における1日のコロナ感染者数は人の心理を左右します。今のように400人前後で変わらなければ、外出を控えても、100人を切れば、どっと街にあふれ出すでしょう。感染者数は心の消費のバロメーター。感覚的な数字で世論が動く。何人ならよくて、何人はダメかというロジカルな定義ができていない。現在の400人という数字も昨年の今頃なら『大変だ』となる数字だが、その後、1000人、2000人台となって、今では400人は『当たり前』となり、街に人が出ている。歓楽街でシャッターの閉まった店を目にして、経済が回らなくなっているという意識もある」と解説した。

 飲食店の時短営業は感染者数が激減しない限り今後も続く。渡辺氏は「そもそも、飲食店がダメだと言われるのは、お酒を飲んで、気の緩みや開放感から大声でしゃべって飛沫を飛ばすことに感染の可能性あるということ。何人がダメとかのロジカルな数字もない」と指摘。その上で、業務形態の変容について見解を語った。

 「テイクアウトは引き続き増えていくでしょうし、一番変化しなければならなくなった居酒屋の業務形態については、例えば『天狗』がとんかつ店を立ち上げたり、『和民』が焼肉店になったりと、変わってきている。少人数化、個食化がトレンドになりつつ、ワクチンが普及して、コロナがインフルエンザのような存在になれば、たくさんの人が飲みに来て元に戻ることもある。ただ、今回のコロナ禍で家飲みが広がったことで『外の店で飲むと高くつく』という意識も広がった。中食、外食、個食の楽しみ方も含めて多様化していくでしょう」

 コロナ後の世界へ、時代は転換期を迎えている。

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