晩夏のコンビニから「おでん」が消える 流通アナリスト・渡辺広明氏が解説

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渡辺 広明 渡辺 広明

 GDPの6割を占める個人消費―。コンビニエンスストアなどマーケティング現場で起こる最新の消費行動の変化を、流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの一般的な視点」から発信する。今回のテーマは「おでん」。晩秋から冬にかけてのコンビニ商品というイメージが強いが、実は8月から販売されてきた。その理由を解説しながら、一方で晩夏の店頭から消えつつある動きも指摘。「おでん」から見えてくるコンビニの世界を、渡辺氏が解き明かした。
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 コンビニの店長、スーパーバイザー、バイヤー22年、メーカーのマーケッターで7年。ビジネスパーソンとして現場視点の流通お役立ち小ネタをタイムリーに発信していきますのでよろしくお願いします。

 コンビニの季節は暦よりも早く巡ります。

 8月の暑い時期に販売をスタートするコンビニおでんはその象徴。

 クーラーの効いた部屋でおでんを食べる。僕は嫌いじゃないですが、一部のコンビニを除いて、やはり夏にはあまり売れません。

 早めに展開するのは、お客さまにおでんを売っていることをアピールし、寒くなってからの売上を最大化する作戦です。

 でも、おでんはなかなか儲からない。箸や器やからしなど、無償で提供するものも多く、僕が夜勤のお手伝いする時も、おでん什器(じゅうき)の清掃や調理には1時間前後の作業となり、結構大変。店側から見ると人件費がかかるんです。

 おでんだけで利益が出るか出ないかの目安は1日100個の販売。チキンなどにファストフードのメインの座を奪われ、ピーク時でも100個売れるコンビニは全店舗の半分程度と言われています。

 おでん早期立ち上げは、本部の店舗巡回員の出世に大きく影響する基準のひとつになっているので、本部のビジネスパーソンの辛いところだったんです。

 おでんは、廃棄での食品ロスや儲けが減る、人手不足により対応が難しくなるなど、昨今のコンビニ問題を象徴する商品。そんな背景もあり、一律展開から舵を切り、8月の展開は昨年の3割ぐらい激減中。販売のピークは寒さがグッと増し,家庭や外食で鍋を囲み始める直前の11月中頃で、真冬に向けて売れなくなる。

 おでんは、どのコンビニにもいつでもあるのが当たり前でしたが、短い期間の展開、取り扱いのない店もある。そんな蝉のような切ない存在。今後、晩夏の店頭から消え、コンビニは本来の季節(暦)を取り戻していきそうです。いつでもおでんが食べられなくなるのは少し寂しいけど。

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