世界から評価の高い「ミズナラ樽」って知ってる? 日本のウイスキーの代表格「山崎」の新商品にも使われています

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

日本のウイスキーメーカーである「サントリー」(本社:大阪市北区)。自社のウイスキーブランドであるシングルモルト「山崎」の新商品となる「シングルモルトウイスキー山崎 LIMITED EDITION 2021」を、5月25日より数量限定で販売すると1月に発表しました。

同商品は、公式サイトによると「酒齢12年以上のミズナラ新樽原酒を使用した贅沢な一品」とのことで、ウイスキーファンにはたまりません。SNSでは「完売必至」という声も。

この「ミズナラの樽」って、いったいどんな樽なのでしょうか? 長年のウイスキーファンなら常識なのかも知れませんが、ウイスキー初心者の人にはあまり馴染みのない言葉ですよね。

樽熟成がウイスキーづくりの肝

まず、ウイスキーについての基本知識である樽熟成について説明します。ウイスキーづくりには、麦の糖化、発酵、蒸留という過程がありますが、その後の樽熟成も大事な工程です。蒸留によってアルコール純度を高めた原酒を、樽につめて何年間、何十年間も寝かせます。

この作業によって、樽の木の成分が原酒にしみ出して鮮やかな琥珀色や風味がつき、ウイスキーを美味しいものに仕立て上げています。ウイスキーの樽熟成には、ホワイトオークやスパニッシュオークなどの海外産の木がよく使われます。

またバーボン樽やシェリー樽などのように、他のお酒を熟成させた樽を再利用することで、独特な風味やコクを出すこともあります。このように、ウイスキーづくりに必要不可欠な樽熟成。その中で、樽の素材として近年注目を集めているのがミズナラです。

そもそもミズナラってどんな木?

ミズナラとは一体どんな木なのでしょうか。ミズナラはブナ科コナラ属という木の種類に属し、日本では代表的な木のひとつです。その分布も広く、北は北海道から南は鹿児島県まで、幅広く分布しています。そんなミズナラですが、高級家具の材料としても有名であり、現在でもテーブルや椅子など多くの家具に使われています。また、ドングリのなる木としても知られています。

なぜ日本でミズナラ樽が使われるようになったの?

そんなミズナラがなぜウイスキーづくりに使われるようになったのでしょう。その歴史は、第二次世界大戦の頃までさかのぼります。当時、日本のウイスキーメーカーは、シェリー樽などヨーロッパから輸入した樽を使ってウイスキーの熟成を行っていました。しかし、戦争によって欧米からの樽の輸入ができなくなってしまいます。そのため、国内で樽の材料となる木を探し求め、選んだのが北海道に群生していたミズナラでした。

ところが、ミズナラで作った樽は材質的に原酒が漏れやすく、また熟成した原酒は木の香りが強すぎたこともあり、当初はあまり評価が良くありませんでした。しかし、2度、3度と再利用されるうち、強すぎた香りは穏やかになっていき、白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)といったお香を思わせる日本的な香りが顔を覗かせるようになりました。

このような紆余曲折を経て、ミズナラ樽はジャパニーズウイスキーの主戦力となっていったのです。現在でも、ミズナラ樽はサントリーの山崎をはじめ、多くのジャパニーズウイスキーに使われています。

世界でも評価されているミズナラ

ミズナラ樽が開発されてから数十年。今では、ミズナラ樽で作られたウイスキーは、海外のウイスキー専門家やウイスキーファンからも高い評価を得ています。世界ではミズナラは「ジャパニーズオーク」と呼ばれ、ミズナラ樽は「ウイスキーの歴史に刻まれる日本人の偉大な発明のひとつ」とたたえられています。

世界的に名高いスコッチメーカーであるシーバスリーガル社では、主力製品のひとつとしてミズナラ樽でフィニッシュ(仕上げに行う短期間熟成のこと)させた「シーバスリーガル・ミズナラ」をリリースしています。このように、世界的な評価を受けるミズナラ樽は、海外のウイスキーづくりにも利用されているのです。

ミズナラの“新樽”は普通のミズナラ樽とどう違う?

さて、日本の偉大な発明品であるミズナラ樽。冒頭で紹介した「シングルモルト山崎LIMITED EDITION2021」で使用されているのは「酒齢12年以上のミズナラ新樽原酒」。
商品説明にも「山崎ブランドではじめて、ミズナラの新樽で熟成した原酒を使用」と書かれています。

ミズナラ新樽とは、「ミズナラ樽で、最初に熟成したウイスキー原酒」とのこと。つまり、再利用していないミズナラ樽を使用しているということですね。先ほどミズナラ樽の歴史についての紹介で、こう説明しました。「(当初のミズナラ樽熟成は)木の香りが強すぎたこともあり、当初はあまり評価が良くありませんでした」。

つまり言い換えれば、少なくとも以前は評判が良くなかった樽を使っているということです。本当に美味しいのかな? と一瞬疑いたくなってしまいますが、ここは一流ウイスキーメーカーであるサントリーの腕の見せどころと言えるのではないでしょうか。

独自の技術を駆使して、誰もが納得できる1本に仕上がっているのでしょう。公式サイトでは「なめらかで厚みのある甘みと、いきいきとした果実味を擁する、飲みごたえのある一本に仕上げました」とあり、自信のほどを覗かせています。ミズナラ樽のウイスキー、試してみる価値はありそうです。

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