バイデン政権が1月20日にいよいよ始まった。バイデン大統領は20分間の演説の中で何回も結束という言葉を使い、分断が深まった米国を結束させる決意を強調した。その後、バイデン大統領は早速、パリ協定復帰や世界保健機関(WHO)からの脱退撤回などに関する大統領令に署名するなど、脱トランプ路線を鮮明にしている。では、バイデン政権になって具体的に日本にはどんな影響が考えられるだろうか。
日米関係
まず、最も重要な日米関係については、バイデン大統領も日米関係の重要性を重視していることから、菅・バイデン関係でも良好な日米関係が維持されていくだろう。また、新型コロナウイルスの対応で菅政権の支持率が急落しており、今年同政権がもつかどうか分からないが、アフター菅になっても大きな問題は生じないだろう。
中国・北朝鮮
だが、周辺各国を含んだ日本の安全保障では緊張が残る。バイデン政権の最大の注目点は対中国だが、基本的にはトランプ政権と同じように厳しい態度で中国に対応していくことになる。気候変動や新型コロナなどグローバルな課題で中国と協力できるところは協力し、また、トランプ政権による関税措置などは取らないだろうが、安全保障や人権、経済など基本的には厳しい姿勢で対応していくことになる。要は、米中関係の対立は続くことになり、今後の行方によって日本外交はその狭間で難しい舵取りを余儀なくされ、例えば、在中邦人の拘束などが大きな問題になる恐れもある。
そして、トランプ氏は北朝鮮のトップと会談する初めての米国大統領となったが、バイデン大統領はオバマ氏と同じように、“核・ミサイルで北朝鮮がやるべき行動を取らない限り進展はない”とのスタンスであることから、北朝鮮が再び瀬戸際外交や核実験、ミサイル発射などの行動に出る恐れがあり、2017年の朝鮮半島危機のように、在韓邦人の安全・保護という問題が再び浮上してくる可能性もある。
中東地域の安定
一方、日本が石油の9割を依存する中東では潜在的な脅威が残る。トランプ政権の4年間では、米イランの緊張が大きな懸念材料だった。去年初め、イラクで米軍がイラン革命防衛隊の司令官を殺害したことで軍事的緊張が高まり、日経平均株価も一時500円下落する事態となった。
バイデン政権になったことで、トランプ時代の軍事リスクはなくなることになったが、今度は、イランと長年対立するサウジアラビアとイスラエルの動向が懸念される。サウジアラビアとイスラエルはトランプ政権と蜜月関係だったが、バイデン政権になったことで、イランへの警戒を高めつつある。サウジアラビアとイスラエルは最近になって経済分野などで急速に関係を深めているが、それは中東地域で対イラン包囲網を形成することが目的でもある。イスラエルは、シリアやレバノン、イラクなどで政治経済的な影響力を高めようとするイランを警戒しており、今日でもシリアで活動する親イラン組織への空爆を続けている。
一方、最近、イランは核開発で挑発的な行動を取っており、バイデン政権が公約に掲げる2015年イラン核合意への復帰が順調に進まない可能性も浮上している。イランでは今年6月に大統領選挙が実施される予定だが、ここで穏健派の現職から強硬派の大統領が選出されると、イランとサウジアラビア、イスラエルと巡る動向で一気に緊張が高まる可能性がある。
中東地域の安定は、日本のエネルギー確保という点から極めて重要だが、今後はより中東情勢の行方を注視する必要があるだろう。