「もう持たない…」接待伴う夜の店が悲鳴 忘年会シーズンの京都・祇園など休廃業相次ぐ

辻 智也 辻 智也

 新型コロナウイルス感染症の「第3波」の渦中にある師走、京都市の繁華街、祇園や木屋町の「接待を伴う夜の店」が大打撃を受けている。書き入れ時の忘年会シーズンだが、お得意様だった大手企業のサラリーマンらが「勤務先のルール」で来店をストップしていることが大きく影響。ネオン街に酔客の姿は少なく、閉店する店も続出し、「もう持たない」という声が上がる。

 フェースシールドをつけたホステス4人が、1人の男性客を囲む。「お客さんが少ないですから、普通はお客さん1人にマンツーマンで女の子がつくんですけどね」。祇園で開店42年を迎えたラウンジ「祇園ペペシャンプル」の女性経営者はそう苦笑する。

 この1年、新型コロナに振り回されてきた。「第1波」の3月頃は客足が例年の3割程度になり、4~5月の緊急事態宣言期間は休業した。9~10月頃は一時回復して満席になる日もあったが、11月以降は再び例年の3割程度に落ち込んだという。

 もともと観光客の来店は少なく、企業の接待や公務員の宴会などが主な客層だった。しかし、多くの企業がコロナ流行を受けて「夜の店での宴会禁止」などのルールを定めたため、「お得意様」は大きく減った。毎年12月は忘年会の予約が10件以上入るが、今年はほとんどないという。

 この女性経営者は、ペペシャンプルを含め祇園でラウンジとクラブ計3店を経営していたが、既に1店を休業した。「リーマンショックや東日本大震災直後の『自粛ムード』とは比べものにならない打撃です」と嘆く。

 客足が減ったことでホステスの出勤を通常の半数程度に抑えた。そのため、当然ながらホステスも手取り収入が減っている。30代のホステスは「お給料は2割ほど減り、正直つらい。感染リスクもあるけど、生活のため働かざるを得ない。今後もこの店で働きたいけど、コロナでどうなるのか…」と不安を隠さない。

 第3波の収束は見えず、京都府内でも12月9日に過去最多の75人の感染が判明した。府による飲食店などへの休業要請はまだ出ていないが、女性経営者は「私たちのお店は午後の9時、10時から開ける店。もし、大阪みたいに時短営業を要請されたら、もう持ちません」と心配する。

 祇園や木屋町、先斗町では、午後9時頃になっても、スナックやラウンジが入る雑居ビルの灯は消えたままの店が目立つ。廃業した店も多いという。

 東京商工リサーチ京都支店によると、京都市内では今年1~10月、飲食業の休廃業・解散件数が17件となり、前年同期の12件を上回った。同社の担当者は「個人経営のスナックなどはデータを拾いきれず、実際はさらに多いと思われる。年末の書き入れ時にコロナの影響が深刻化し、飲食店の廃業は増え続けるのでは」と指摘する。

 木屋町界わい(京都市中京区)で10年ほど営業するガールズバーの50代男性経営者は「売り上げは普段の6~7割ほどに落ちた。それでもうちは、まだましな方」と話す。カウンター越しの接客がメインの小規模な店で、企業接待などは元々少ないが、グループ客はほぼゼロになり、単独で来店する常連客に支えてもらっているような状況という。

 男性は「今の収入は、私がぎりぎり生活できるレベル」としつつ、将来の見通しについて「正直、来年か再来年にコロナが収束しても、全てのお客さんは夜の街に戻ってこないと思う。この1年で、夜の過ごし方が決定的に変わってしまったんじゃないか」とぼやいた。

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