新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、会社の副業に関する対応に変化が見られています。従業員の収入源を増やし生活を安定させることを目的として副業を認める企業がある一方で、職場内での新型コロナウイルス感染のリスクを下げるために副業を禁止とする企業もあります。もちろん感染を拡大させないための対応は重要です。しかし本業と副業で生計を立ててきた人にとって、突然副業が禁止になると日々の生活面で大きなリスクを伴います。
私の職場では、コロナウイルスが流行る前まで副業は認められていました。しかし、8月に何の前触れもなく副業が禁止となってしまったのです。職場には私を含め4人のシングルマザーがおり、全員副業をしていました。
副業に関しては、2018年1月、厚生労働省が「働き方改革実行計画」(働き方改革実現会議決定)を踏まえ、副業・兼業の普及促進をしています。
また厚生労働省が報告した2016(平成28)年度の「全国ひとり親世帯等調査結果報告」では、ひとり親の副業の状況が調査されています。
2011(平成23)年と比較すると副業をしているシングルマザーの割合は増えており、シングルマザーは本業の収入だけでは経済的に苦しいということがわかります。平均年間副業収入の金額を月で割ってみると、月に3~4万円の収入が必要であることが読み取れます。
私たち4人は副業をしなければ生活が困窮してしまうことを上司に相談したのですが、「コロナになったら困るのは自分でしょ。さらに職場にも迷惑をかける。コロナは恐ろしいから、副業はもちろん不要不急の外出、県外に行くならその後2週間は仕事を休んでもらう」と言われたのです。
副業を禁止された4人のシングルマザーの現状
私たち4人のシングルマザーが副業の収入がなくなると以下のようなことが起こることを職場に伝えました。
・家賃を支払うことが難しい
・子どもの習い事を辞めさせなければいけない
・子どもの進学を諦めさせなくてはいけない
・食費が足りない
職場からは、「アルバイトなど自宅外での副業は認められない。しかし、在宅で誰とも合わずにできる副業であれば認める」というものでした。4人中3人はアルバイトとして副業をしていたので、泣く泣くやめることになりました。
副業が禁止という通達が出たときに、4人が副業をしていることを知らない人からは「副業なんてしてる人いる?どれだけ貧乏なの?」という言葉も聞かれました。
副業は禁止、同僚からの悲しい発言、会社の業績もよくないことから、2人のシングルマザーが退職という選択をしました。
私を含め会社に残ったシングルマザーは在宅でできる副業を行い、生計を維持している状況です。
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コロナ禍において感染予防を意識して生活を送ることはもちろん重要なことです。
しかし感染リスクを必要以上に警戒することを求められることによって、職場にいることができなくなるケースもあります。
シングルマザーにとって、副業は大切な収入源です。低所得者であればあるほど、これまで認められていた副業が禁止になることで受ける影響は大きいです。
新型コロナウイルスの感染予防対策と同時にうまく付き合っていくための方法を、個人だけではなく企業も模索しながら「共生できる社会」が必要なのではないでしょうか。