コロナ禍の大阪・北新地…休業決めたママの思い 家族説得して退職金つぎ込み叶えた夢がわずか1年で…

広畑 千春 広畑 千春

 大阪市北区で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、大阪府がナイトクラブやバー、カラオケなどの利用自粛を訴えたのを受け、大阪最大の繁華街、北新地でも休業する店が相次いでいます。

 界隈で小さなスナックを経営する女性も、2週間の休業を決めました。「腹をくくったのは3月末。お客さんもだんだん少なくなっていて…。いつもは会社帰りや出張組、接待のお客様が中心だったけど、2月末からは『自粛』、3月中旬からは『絶対立ち入り禁止』の通達を出す大手企業もあって、週3日週末だけ開けることにしたんです。それでも、下旬になるころには、来て下さるお客様にも申し訳ない気持ちになりながら…」と苦しい胸の内を明かします。

 公務員をやめた後、第二の人生を―と家族を説得し、退職金をつぎ込んで叶えた夢でした。なんとか1年、赤字にならずにやってきましたが、突如襲ったコロナ禍。4月1日には、吉村洋文大阪府知事が大阪市北区のショーパブやクラブなどで集団感染が確認されたことを公表。「テレビや雑誌の記者も大勢来て、ネットでも酷いデマが流れて…。街自体がロックアウト状態で誰も歩いていないし、もうこれは無理だ…って」と寂しげに笑います。

 「感染させる不安はなくなってホッとした半面、休んだ瞬間から売り上げはゼロ。でも光熱費もカラオケのリース代も固定費はかかる。家賃も今まで通り先払いだし、途端に立ち行かなくなるんです。再開できるかも不透明だし、ママ仲間にはシングルマザーの子もいるけれど、やっぱり休業を決めて『これからどうしよう…』と泣いていました。お店の女の子もシングルマザーだったりするから、給料を支払わないわけにはいかない。掛け売りをしているお店も少なくないけれど、そのお金はいつ払われるのか…」

 収入が激減した中小事業者らへの運営資金貸付も申請する予定ですが「外出自粛なのに、まず役所の窓口で長時間並んで待って、前年同月比の証明をして認定してもらって、ようやく申請できる。でも、ネットで見ても、手続きも利子の仕組みも複雑すぎて、今の自分に何が使えてどれを選べばいいのか、全然分からない。そうしているうちにも支払いはやってきて、追い詰められていくんです。役所にいたころには、ちゃんと分からなかった。こうした状況を、役所や政治家の人たちは、見えているのでしょうか?」。

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