豊田真由子、欧州の新型コロナ感染再拡大は遠い国のことと考えないで…開発は簡単でないワクチン&特効薬

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

▽ワクチンや治療薬の状況は?

いろいろな情報が錯綜していますので、現時点での事実関係を整理してみます。結論から申し上げると、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンや特効薬は、まだ開発途上という段階です。

<ワクチン>

ロシアのワクチン以外、承認されたワクチンは、まだありません。

現在臨床試験に入っているCOVID-19ワクチン候補は47種類で、そのうち、P3試験(臨床試験の最終段階)を行っているワクチンは10種類です(WHO:11月3日)。英アストラゼネカと英オックスフォード大が共同開発しているアデノウイルスベクターワクチン、米モデルナのmRNAワクチン、独ビオンテックと米ファイザーのmRNAワクチン、中国のシノバックやシノファームの不活化ワクチン、米ジョンソン・エンド・ジョンソンのウイルスベクターワクチン、米ノババックスの組換えタンパクワクチンなどがあります。

なお、ガマレヤ研究所(モスクワ)が開発したウイルスベクターワクチン「スプートニクV」は、8月にロシアで承認され、新型コロナウイルスワクチンの承認は世界初ですが、まだ臨床試験を実施している段階で、安全性や有効性に疑問の声も上がっています。

一方、重篤な有害事象(と疑われる)発生により、試験を一時中断するケースも出ています。英アストラゼネカは9月、英国で被験者1人に有害事象が出たとして、全世界で試験を一時的に中断し、米国ジョンソン・エンド・ジョンソンも10月、被験者1人に原因不明な症状が出たとして、日本でのP1試験を含むすべての試験で投与を中断したと発表しました。

なお、こうしたことは、ワクチンの開発過程において、通常想定されることであり、悲観的にも楽観的にもなるべきではありません。

<治療薬>

各社が、既存薬の転用や新薬の開発を進めている状況ですが、新型コロナウイルス感染症の“特効薬”といえる薬は、未だ出ていないという状況です。

治療薬は、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」と、重症化によって生じる「サイトカインストーム」や「急性呼吸窮迫症候群」等を改善する抗炎症薬に分けられ、既存薬を転用する方法と、新型コロナウイルス感染症向けの新たな薬剤を開発する方法とが進められています。

米ギリアドのレムデシビルは、もともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていたもので、2020年5月、アメリカの食品医薬品局(FDA)により、新型コロナウイルス感染症への緊急使用が認可され、それを受けて日本でも特例承認がなされました。一方、WHOは10月、レムデシビルなど4つの薬剤について、患者の入院期間や死亡率にはほとんど影響を与えなかったとする臨床試験の結果を発表しました。投与時期や患者母集団の違い等によって、結果に相違が出ているものと推測されます。日本の医療現場にお話を聞くと、レミデシビルについて、早い段階での投与で効果が出ていると思うとおっしゃる方が多いので、うまく活用していただく、そして、今後のエビデンスの蓄積が期待されるということかと思います。

日医工などのデキサメタゾンは、重症感染症や間質性肺炎などの治療薬として承認されているステロイド薬です。英国で行われた大規模臨床研究で重症患者の死亡を減少させた等と報告され、新型コロナ治療薬として承認されているわけではありませんが、厚生労働省の「診療の手引き」に、レムデシビルとともに標準的な治療法として掲載されています。

  ◇   ◇   ◇

以前から申し上げていることですが、どの感染症でも、ワクチンも特効薬も、開発はそう簡単ではありません。時間もかかり、そして、これがあればバッチリ!というものが、必ずできるとも限らないのです。

まず、お一人おひとりが、できることを、落ち着いてやり続けること。できるだけ、感染しない・させない、そして、感染した人を非難しない、過度におそれず、社会・経済を回していく・・・この歩みこそが、着実で、そして、求められている道ではないかと思います。

がんばってまいりましょう。

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