世の中には、様々な理由で自分を傷つけることがやめられない人がいます。もしあなたが、親しい友人の自傷行為に気がづいたとき、どんな言葉をかけるでしょう。
漫画家の嶋水えけさんが手がけた『君の傷みを知りたい』は、他人の心の傷みがわからず自傷行為に及んでしまう主人公の女子高生と、その親友との交流が描かれた作品です。嶋水さんのX(旧Twitter)にポストされると、多くの人の関心を集めて6000を超える「いいね」が寄せられています。
昔から感情を表に出さない性格だったものの、高校の入学をきっかけに普段から笑みをもらすようになった「ウシオ」。そんな様子を見ていた中学からの同級生「アサ」はウシオの変化に安堵したものの、ウシオが左手に負った怪我を心配していました。
アサには“転んで負った怪我”と伝えていましたが、本当は「心の傷みが分からない」ために、その罰として自身で噛みついてできたものでした。以前ウシオの母が死んでしまった時も、ウシオは悲しみによって泣くことはなく、ただ表情を崩さずに立ち尽くすだけ。そして、その時から自分の手を噛むようになったのです。
後日、ウシオとアサが買い物で外出した際、横断歩道を渡っていたウシオが車と衝突しそうに。アサがかばったことで彼女がひかれてしまい、意識を失った状態で病院に搬送されます。病室で横になっているアサに寄り添っていたウシオは、相変わらず涙を流すことができず、そんな自分に罰を与えるため、再び左手を噛もうとします。
すると「やめなよ」と、自傷行為を止めるアサ。さらに「それ 昔からずっとしてたでしょ」「何かあった時 いつも同じ場所 怪我してくるんだもん」と打ち明け、「ウシオをそんな目に合わせるために悲しんでるんじゃない」「私が大切に守り抜いたものを傷つけたりしないでよ」と思いのたけをぶつけます。涙を流すアサに抱きつかれたウシオは、心の中で「涙って暖かい」と思うのでした。
ウシオとアサの様子に、読者からは「アサが良い友達すぎて泣いた」「素敵な話だった」などの声が。そこで作者である嶋水さんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。
―同作を描いたきっかけを教えてください。
前作『ポラリスは消えない』の連載用ネームを構想中、息抜きに何か別の読み切りを描こうと思ったのがきっかけでした。前作の連載は主人公が大切な存在を失った状態で始まるお話で、その感情がとてもしんどかったので、両者生きてる状態で報われる話を描こうという大前提がありました。
―作中で特に気に入っている場面があれば、理由と一緒に教えてください。
アサがウシオに対し、自分を大切にしないことを叱っているシーンです。この漫画のテーマ的に重要なシーンでもあり、私自身が2人のそういう関係性にぐっとくるという部分でもあるので。
―作中ではウシオが自身の手を噛むという行為に及んでいますが、嶋水さんが自傷行為に対して思うことをぜひお聞かせください。
自傷行為自体が絶対に悪であるという気持ちは私にはありません。自傷行為に及ぶ理由は人それぞれで、大抵の場合とても苦しい感情の発露だったりするし、人の体はその人自身のものなので。
ただ、もし私の周りで大切なひとが自傷行為をしていたらとても悲しいです。相手の苦しいという感情は否定しないけれど、私自身の悲しいという気持ちは伝えるだろうと思います。苦しみからの逃避の方法って、自傷行為以外にもたくさんあって、その方法の1つであるような漫画を描けたらいいなと思っています。
―読者にメッセージをお願いいたします。
漫画を読んでいただいてありがとうございます!描いた漫画が、読者の方の人生においてほんの少しでも「生きててよかったな要素」になれていたら幸いです。
<嶋水えけさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/E_shimaz
▽Instagram
https://www.instagram.com/e_shimaz/