一休さんの有名なとんち話「このはしわたるべからず」。橋のたもとの立て札を見た一休さんは、端ではなく真ん中を歩いて渡ったと言われています。
「楠公(なんこう)さん」の呼び名で親しまれる湊川神社(神戸市中央区)の参道を歩いている時、ふと頭をよぎったのが「参道は右側通行か左側通行か」。一休さんに出てくるような通行ルールの立て札はありませんが、中央部分は誰も歩いていません。みなさん参道の左端や右端を譲り合って歩いています。
神社に尋ねてみると即解決。しかし来年の初詣期間中に限り様子が変わりそうなのです。「つい先ほど決まったばかりです」というルールとはーー。
参道の真ん中は…
同神社の担当者に話を聞きました。
――参道は右側通行か左側通行か、ルールはありますか?
「右側か左側か、当神社では決まりはありません」
――真ん中を歩く人はほぼいません。
「よく聞くのは『真ん中は神様の通り道だから歩かないように』。(本殿にまつる)神様の正面を偉そうに歩いたらあかんよということですね」
――右側でも左側でも、ルール違反ではないんですね。
「当神社ではその通りです。しかし来年のお正月は…」
――お正月に何か?
「来年の初詣期間中はコロナ対策として、左側通行を導入することにしました。つい先ほど決まったばかりです」
――えっ、お正月限定で左側通行ですか?
「人の密集を避けるための対策です。対面で行く人来る人がごちゃ混ぜになるよりも、左側通行と決めた方が多少なりともコロナ感染のリスクが低下するという判断です」
神様への参拝ルートさえも変えてしまったコロナウイルス。同神社ではコロナ対策のため、手を清める手水舎や賽銭箱のそばにある鈴緒は今年の3月から使用中止のまま。来年の初詣期間中は露店の数も減らす方向で店側と話を進めているそうです。
お伊勢さんでは
日本人の心のふるさととも言われる伊勢神宮(三重県伊勢市)には「内宮は右側通行、外宮は左側通行」という独自のルールがあります。敷地内のあちこちには「右側通行」「ここでは左側通行」といった札が立てられています。
同神社公式ホームページ内「教えてお伊勢さん」に解説がありました。
「古い書物などを読んでもその理由ははっきりと書かれていませんが、参道の外側を通って神前に進んだ参拝者の『慎みの心』の表れと考えられます。また、参拝前にお清めをする御手洗場みたらしが内宮は右側、外宮は左側であったことも理由と考えられます」(伊勢神宮ホームページより引用)