ガラスケースに並ぶ「ファミコン」や「PCエンジン」、「メガドライブ」といったビデオゲーム機。さらには「たまごっち」や「ファミコン」のソフトもたくさん-。ここは滋賀県にある博物館です。古文書や歴史資料が並んでいそうな陳列ケースの中に、往年のゲーム機がずらりと並んでいます。入場者が「懐かしい」を連発する特別展が開かれています。
特別展は、滋賀県の山すそにある愛荘(あいしょう)町立歴史文化博物館で開かれている「玩具伝説」です。博物館は「湖東三山」と呼ばれる古寺の一つである金剛輪寺のそばにあり、重厚な建物です。一見、堅苦しい企画展を開催していそう。でも、内部ではユニークな催しが行われています。
会場には、約200点が並んでいます。導入部で展示されているのは昔ながらの玩具です。滋賀県の湖東地域に伝わり、指で木製の玉をはじく盤上ゲーム「カロム」の盤や、滋賀県内で戦後盛んに作られたブリキのおもちゃが並んでいます。
さらに、女の子向けの調理ができる玩具「ママレンジ」やリカちゃん、シルバニアファミリーなどの人形もあります。
次の「平成のおもちゃ」の一角からはエッジが立ってきます。
社会現象になった「たまごっち」。白色の機械は希少価値があると話題になりました。「遊☆戯☆王カードダス」。漫画発祥でカードゲームとしても人気を博しました。レアカードは高値で取引されたとか。さらに「ベイブレード」も。展示品の「ベイブレードスタジアム」は少し欠けていて、よく使い込まれた様子が伝わります。
と、ここまでならほかの博物館でもありそうです。次のコーナーからは、すべてビデオゲーム類です。会場の雰囲気も少し変わったように感じます。
まずは「オデッセイ」。1972年に米国で発売された世界初の家庭用ビデオゲーム機です。ブラウン管テレビに貼り付ける「オーバーレイ」というシートも展示されています。
そして、1977年販売開始のアタリ社「ビデオコンピュータシステム」も。ソフトの一つとして「E.T.The Extra-Terrestrial(イーティー・ザ・エクストラ・テレストリアル)」が見られます。映画「E.T.」をモデルに開発されたゲームですが、大量の返品が発生し、そのソフトが米ニューメキシコ州の町の一角に埋められたといういわくつきのソフトです。2014年に、ソフトが「発掘」されましたが、展示品は「出土品」ではないそう。
1983年、本格的なビデオゲームの時代が到来しました。任天堂によるファミリーコンピュータ(ファミコン)の発売です。しかし同じ年には、ほかのメーカーから同じようなゲーム機が販売されていました。会場にはその「同世代機」が陳列されています。
エポックの「カセットビジョン」、ツクダオリジナルの「オセロマルチビジョン」、カシオ計算機の「PV-1000」、学習研究社(学研)の「TVボーイ」、バンダイの「RX-78」といったマシンをガラス越しに見られます。
その後は、ファミコンが一世を風靡(ふうび)しました。会場には「たけしの挑戦状」や「ドルアーガの塔」などの専用ソフトもあり、「遊んだ」「やっていた」との声があがりそうです。さらにPCエンジンやメガドライブ、ゲームボーイ、ドリームキャストなどもあります。
会場の中央部には紙の資料の展示もあります。手書きで書かれたゲームの攻略メモのほか、パズルゲーム「ぷよぷよ」の愛好家が集う「全日本ぷよ協会」の会報、「ストリートファイターⅡ」の猛者たちが集まった大会の様子を報じた雑誌「ゲーメスト」も陳列されています。
と、ここまで見てくると、会場の実に3分の2ほどがビデオゲーム関係の展示です。博物館でこんな企画をしていいのでしょうか?
館の学芸員、西連寺匠さん(27)は「玩具やゲーム機は子供たちが遊んできたもので、昭和や平成の生活を知る上で重要なものです。最初のビデオゲーム、オデッセイが開発されたのが1972年です。ゲーム機はすでに50年近い歴史があるわけです。資料価値があるものが多く、今後は残していかないといけません」と展示の意義を強調しました。
「玩具伝説-おもちゃの60年史」は30日まで。入館料は大人300円、小中学生150円。
住所や氏名、連絡先を明記し博物館にファクス0749(37)4520すると、図録(本体500円、送料210円)を入手することも可能です。