「笽島」…この名字、読めますか? 方言を名字に登録するため、お坊さんが発明した漢字が使われています

日本の難読名字

森岡 浩 森岡 浩

「笽島」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。

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「笽」というあまり見たことがない漢字は、一般の辞書には掲載されていない。というのも、「笽」は特定の地方だけでつかわれる「方言漢字」だからだ。

この名字があるのは、富山市の八尾(やつお)地区。今では富山市の一部となっているが、平成の大合併以前は八尾町という独立した自治体で、毎年9月1日から3日にかけて行われる「おわら風の盆」で全国的に知られている。

この八尾はかつてカイコ蛾に産卵させた蚕紙を生産する蚕種業で栄え、蚕の繭や蚕のたべる桑の葉を入れるために竹で編んだ笊を使っていた。この笊のことを八尾では「そうけ」と呼び、「そうけ屋」と号した豪商もあった。

この「そうけ屋」が明治になって戸籍に名字を登録する際に「そうけ」を使おうとしたのだが、「そうけ」は方言のため漢字がない。この頃、村で一番の知識人は僧侶だった。そこで、寺のお坊さんに相談したところ、お坊さんが考え出したのが「笽」という漢字だという。

こうして無事に「そうけ屋」は「笽島」を名字として登録することができた。ちなみに、「島」は地形ではなく、テリトリーを意味する社会的な意味合いの「島」である。

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