各国で新型コロナウイルスのワクチン、治療薬の開発が急ピッチで進められているが、薬ができるまで感染予防とともに他にできることはあるのだろうか。私たちの体には防衛システムである「免疫」が備わっている。東京医療保健大学で講師を務める管理栄養士・細田明美さんに、食事による免疫の高め方を解説してもらった。
「免疫」とは、さまざまな病気から体を守る仕組み(体の安全装置)
免疫とは、私たちの体に侵入してくる、細菌、ウイルス、アレルギー物質などの異物を体外へ排除してくれる防御システムのことです。また、体内で生じたがん細胞なども排除してくれます。感染症やがんなどの病気になるもとである異物を見つけて殺傷し、排除するのが免疫細胞です。
免疫細胞は、病原菌などから体を守ること以外にも多くの役割を果たしています。例えば、傷ついた細胞を修復したり、新陳代謝を活発にして、体の機能低下や細胞の老化を防いだりしてくれます。
免疫をつかさどる免疫細胞が元気に活動し、免疫システムが適切に働いてくれていれば、病気から体を守り、外的なストレスにも強くなります。風邪もひきにくく、アレルギーも起こしにくくなります。このように、自分の体を守るために「免疫力」を高めることはとても大切です。
こういった理由から、新型コロナウイルス感染症拡大防止において、この未知なるウイルスに対する抵抗力を維持・強化させる、すなわち免疫力を高めることが重要なポイントとなるのです。感染防止、重症化予防につながる「免疫力」がいま改めて注目されています。
そして、この免疫機能の状態は、私たちの日常生活と密接に関係しています。加齢や極度のストレス、睡眠不足や運動不足、飲酒・喫煙など生活習慣、食生活の乱れといった日常生活のバランスが崩れると免疫力が低下します。その中でも特に重要なのは、栄養と食事です。
近年の研究から、私たちに備わっている免疫システムには多くの種類の食品成分や栄養素が関わっていることがわかってきました。ある特定の食品や栄養素だけを強化すればよいということではありません。いろいろな食品から、栄養バランスのとれた食事をとることで、様々な成分が複合的に作用し、私たちは、感染症などの病気から身を守り、健康を維持することができます。