「目」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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「目」一字の名字。もちろん「め」ではなく、知らない限り絶対に読めないだろう。
古代、朝廷の役職には四等官といって、上から順に「かみ」「すけ」「じょう」「さかん」という4つの位があった。各役所で一番偉い人の役職は「~かみ」といい、以下「~すけ」「~じょう」「~さかん」となる。この制度は次第にすたれていったが、一部は江戸時代まで形骸化して続いていた。
たとえば、大岡越前守は越前国の守(=長官)、大石内蔵助は内蔵寮の助(=次官)という意味である。もちろん、いずれも名前だけで実際にそういう仕事をしていたわけではない。そしてこの名称は、役所によってあてる漢字が違っていた。
「かみ」は「督」や「頭」とも書く他、「すけ」も「佐」「介」などとも書く。そして、「さかん」には「目」という漢字をあてることがあった(他には「属」「主典」など)。
そのため、「目」と書いて「さかん」と読むのは、古い時代ではそれほど難読ではなかったと思われる。現在は大阪府と山口県に集中しており、山口県では読み方が「さっか」と変化している。