多頭飼育崩壊で17匹もの猫が行き場を失い、保活センターから京都の動物保護団体「Pawer.(パワー)」に保護要請があった。Pawer.が保護した後、預かりボランティアや他の活動家と協力して里親を探したという。いつか猫を飼おうと思っていた藤野さんは、偶然、Pawer.を運営する大西さんと出会い、多頭飼育崩壊からレスキューされた猫を2匹譲渡してもらった。
多頭飼育崩壊からのレスキュー
2019年4月、京都市東山区で多頭飼育崩壊があった。軽度の認知症を患った69歳の女性が17匹もの猫を飼育していのだが、猫に噛まれ壊死した親指を切断するために入院。退院しても家には戻らず、認知症患者の施設に入所したため、猫の面倒を見られなくなり、地域包括支援センターがPawer.に保護を要請した。なかには10歳を超える猫もいて、劣悪な環境で飼育されていたという。
女性は生活保護を受給していて、保護費を受給すると、その足でタクシーに乗り、猫缶を買い占めて、それが無くなると冷凍うどんを与えていた。実際には、月の半分以上は冷凍うどんを食べていたという。
猫たちは、京都のPawer.が引き受け、その後、預かりボランティアや他の活動家の協力を得て里親を探した。数回の引っ越しが猫にはストレスになったようだった。
京都府に住む藤野さんは、マンツーマンで英会話を学んでいた。いつもはレッスンが終わると講師の大西さんと雑談するのだが、4月下旬、レッスンが終わると、「今日は忙しいから帰りますね」と言われた。東山の多頭飼育崩壊の猫たちの世話に行くという。大西さんはPawer.の運営もしていたのだ。
藤野さんは、姉から「ペットショップで猫を買うもんじゃない」と言われ、保護猫のことや殺処分される猫がいることを知っていた。姉自身も拾った猫や知り合いから譲渡してもらった猫を飼っている。藤野さんは、Pawer.のサイトやFB、インスタを真剣に見るようになった。
本当に猫を飼えるのか、何度も自問自答
藤野さんは、数年前から機会があれば猫を飼おうと思っていた。
「大西さんが西本願寺の近くの寺で犬や猫の譲渡会をしているのは知っていたのですが、本当に猫を飼う決心がつくまで、そのことを口にしてはいけないと思っていました」
仕事は自宅の一部で行っているので問題ないが、好きな旅行に行く時はどうするのか、姉に面倒をみてもらわないといけない。姉は、水とごはんの世話はすると言ってくれた。
「短期間の旅行ならできる見通しが立ったのですが、飼ってみたけれど、やっぱり無理ということにならないか自問自答しました」
FBやインスタで見たPawer.の譲渡会のチラシには、多頭飼育崩壊の現場からレスキューされた猫が載っていた。大西さんに「この子にしようかな」と言うと、「同じ預かりボランティアの家に2匹でいる。いつも2匹一緒にいるわけではないので、1匹でも引き取ってもらえると嬉しい」と言われた。藤野さんは、インスタで猫の写真を見て、引き取るなら2匹一緒にと思ったそうだ。
「1歳くらいだったのですが、猫を飼ったことがないので大人猫にしました。子猫を育てる自信がなかったんです。シニアでもなく子猫でもない年齢で、これから長く一緒に暮らすにはちょうどいいと思いました」
コロナ自粛も猫がいるから平気
預かりボランティアの夫婦は、猫のことをとても可愛がっていた。秋から米国に行くことが決まっていたのだが、そうでなければ自分で飼いたいくらいだと言っていた。
2019年7月、トライアルがスタート。名前はかのんちゃんとふうがちゃんにした。
初日は、2匹一緒にクローゼットの奥のほうに入って隠れていた。
「大西さんを見送りに行っている間に隠れてしまったので、どこに行ったのかと驚きました」
まったく触らせてくれず、ふうがちゃんが円形脱毛症になり、1、2カ月後、かのんちゃんも円形脱毛症になった。やがて円形脱毛症が治り、布団に入ってきて足にくっついて眠るようになった。Pawer.の大西さんによると、引っ越しなどのストレスを感じた1、2カ月後に脱毛になることがよくあるという。
ふうがちゃんとかのんちゃんは、保護前、冷凍うどんを食べていたので、ごはんやうどんに執着したが、それはいつしか直っていった。
「触られたり、抱っこされたりするのを嫌がる猫と暮らして楽しいの、と聞かれることがあるのですが、眺めているだけでも退屈しないんです」
コロナ自粛で外出できない日が続いているが、かのんちゃんとふうがちゃんがいるので大丈夫なんだという。